工場員
千代田区にある当工場の11時の気温は39度だった。首にまいたタオルが汗で2倍ほどの重みになっている。ためしに絞ってみると、冗談ではない、ばちゃばちゃと音をたてて床に黒いしみをつくった。 工場全体の空気は重々しく、人はもちろん、機械も物もスローモ…
工場員は暇である。 暇な工場員ほど暇なものもあるまい。 なぜといって、何も流れてこないラインの前に立っていても何も起こらないからである。 物を作ってこその工場で、何も作っていない工場というのはもはや工場ですらない。 それはただの建物であり、そ…
人口20万人都市というとだいたいどのくらいかというと、東京ドームでいうと4個分。 東京都の区でいうと、渋谷区の人口くらいだ。 渋谷区の面積が15㎢であることに対して、私がこれから述べようとしているN市は200km2ほどの大きさで、10倍以上の広さというこ…
いま私は工場の離れにいてこっそりとNRPのHPを開き、今朝聞いたThe Lemon Twigsという兄弟バンドのファーストシングルカット「As Long As We're Together」を再生しながらこの文章を書いている。 https://soundcloud.com/thelemontwigs Bobが紹介した通り、B…
超絶工場員になるためにはどうしたよいのだろうか。 より多くの金を稼げばよいのだろうか? まあそれはとりあえず間違いのない路線なのでおし進めるとして、どちらかというと教養の部分をより高めたいと工場員は思った。 自分に足りないのはどんな知識だろう…
男子三日会わざれば刮目せよとかいうじゃない? でもさ、工場員なんてやってると毎日判で押したように同じ時間に出勤して、いつもの仲間にいつもと同じ挨拶をして、いつものロッカーでいつもの制服に着替えて、いつもと同じラインに立ち、同じ部品が流れてく…
先ほどから拙宅では扇風機の羽が旋回し、部屋を仕切っているビニールのカーテンがそれに反応し、シャ•••、ジャ•••という無機質な物質が擦れあう音以外は何の音もしていない。 いや、それは嘘である。 冷蔵庫のラジエーターからしているかすかなカリカリ音を…
出世したとは言い件、所詮勤め人。何ら昨日と変わりはないさと嘯いてみても周りが放っておかない。 ども、工場員改め、超工場員です。 まさか、とは思った。 ホントかよ、とも思った。 嘘だろ、と思ったときにはそれが叶っていたため、ことさらにに驚愕する…
山口県の雁木という名の日本酒を飲みながら、 BSでDlifeという米英や韓国のドラマばかりを放送しているチャンネルを見ている工場員は 「ああ、今年も始まったな。2015年だね。始まったね。ビギンという名のバンドがあったね。 一曲も知らないけど」など…
なんとか終電は交わしたものの、こんな時間に帰宅とあっては如何な工場員と雖も調子を崩すであろう。残業時間は月ごとに増えて行き先月は130時間を越えた。おまけに慣れない海外出張が続き一月も日本を空けるものだから帰って友人達との距離は広まるばかりで…
もう二時かよ。 仕事を終えて帰ってふろをためている間にニュースをチェックしていたらその事に気がついた。
広島にあるビジネスの一室で工場員はDaft Punkの「Get Lucky」を聞きながらビール飲んでいる。 やっとこさ解放された仕事からの帰途、青春時代一言一句間違えないで歌えるほど聞き込んだOasisの「Wonderwall」という曲を久々に聴きながら帰っていたら、突如…
理想というものがある。 理想。 ありたい自分。(しばしば妄想的に)あるべき自分。 「ブランド品も情報商材も”イメージ”を高値で買わされてるンだ。」闇金ウシジマくん 30巻 第311話 非常に使い古された言葉なのでいまさら感が相当あるのにもかかわら…
ムルソーよろしく「母が死んだでペロン」 と舌をだして首を45度傾げて笑ってみた 母は死んでないし、というか異邦人でもあるまいしさ。 なんといっても自宅謹慎中の身であるよ。どこへもいけない。 そう。9万円がとこの借金をしているのである。 たかだか…
無骨で流行を追わないことが唯一の工場員にも守りたい信条というものがある。 Credというやつだね。 Toeic700点以下の人はわからなそうな意地悪だね。それがもうすごく意地悪だと思わないものかね。 いっそIQの問題だと誰かが言い切ってくれたらなんぼか楽な…
さっきから拙宅では先日発売になったDuft Punkの待望の新作『Random Access Memories』の中の一曲である「Give Life Back To Music」が流れている。正確にはヘッドフォンからであるが。というのもさっきこれを大音量でかけていたら上階の人間から巨大な足音…
先ほどから我が家ではAC/DCというバンドの『Let's get it up(さあ、立ち上がろうぜ)』という歌が流れております。 ―――ようこそエイティーズへ、と言わんばかりの超シンプルなリフ&シャウト。一昔前なら反吐が出そうなサウンドだと一小節目から思ったもの…
仕事を辞めるということは、それまでやってきた生活を変えるということです。 通勤場所が変われば使う交通経路だって変わるし、つきあう人間も食事だって変わる。 勤務先によってはスーツ着用を義務づけられていたりするし、金髪にモヒカンだって何も いわれ…
気がつくと工場員はいつもどこかで自由律俳句を読んでいる自分に気がついた。 放哉や山頭火などの作品を読み散らかした後に必定、大橋裸木にたどり着いた。 そこまでの時間約3日。三ヶ月の余命という都合を鑑みても、まあ結構早いほうだと思う。 それはつま…
余命三ヶ月の工場員は色々な余命三ヶ月を考えてみようと思った。 なぜならば、余命三ヶ月というのは世界一周するにはちょっと短いし、 何もしないにしてはちょっと長過ぎるからだ。 病室のベッドの上で天井を眺めていた工場員は 手始めに余命三ヶ月五十音を…
そもそも単なる思いつきなんか発展させる必要すらない。 何かを作りたい。 そんな欲求を抱えている工場員は思いつくままに絵を描いたり、 文章を書いたり、音楽を作ったりと世の中の大半の人達が 一度は手を汚すあろうクリエイションのまねごとはしてみた。 …
LaptopとはいったものでMacBook Proという名前の冠されている銀色の平べったい物体を膝の上に乗せて、右手にはタバコ、左手にはキリン端麗グリーンラベル(500ml)を持っているということは、両の手が塞がっているのだからこんな風に文章を書くことはできな…
Laptopとはいったもので直訳すると「膝の上」という。今PCを膝の上にのせてこれを書いている。書いているのは工場員だ。どこにでもある、なんということのない、全く普通のごくごく一般的な意味での工場員。名前はまだない。 工場員は今日渋谷に行ってきた。…
想像力だよ。 僕はヒロに言う。「想像力なんだよ」 もちろんこれだけでは何の意味もなさない。僕はさらに説明を加える。 「ただの想像力じゃだめだ。それは伝わってこなくてはならない」ナイン。まだ抽象的に過ぎる。 「つまりさ、監督だね。クリエータ、ア…
工場員は小学校4年生のころ、転校してきたある少女に恋をした。 個人宅が鬱蒼と立ち並ぶ町内を出て、学校へと向かう朝、今じゃコンクリートの中で育てられている田んぼの塀のわきをすり抜けると十字路に出る。小川が流れている、十字路。で、工場員と少女は…
4ヶ月ぶりに実家に帰った工場員の目にしたのは泥酔した両親だった。 深く眉根に皺を寄せた父親は開口一番「お前らが帰ってくるとマイナスなことばかりだ」と、酔った勢いなのか、本音なのかそういった。思い当たる節がないでもない工場員は絶句した。 そうか…
結句、自分の瞳で物を見るということは、様々なバイアスは放っておいて、自分、ここにいる自分を中心に見て、感じることである。 大したことではないけれど、意外とやってみると難しいことに気がつく。 というのは、意外と人は自分の瞳で物を見ていないから…
群れ。 王の頓死。 突然だった。 息子が跡を継ぐことになった。 最初の狩り。大失敗だった。 二度目も同じだった。 腹心の部下たちも表情を曇らせた。 ある晩、彼は群れを離れた。一人こっそりと。 うかつだった。 目が覚めたとき、彼は崖下に倒れていた。 …
けっきょくわからなかったので、 翁めぐみとさせてもらうたんやけど、 いやあ自分で見てもなんか『いや』ですね。 ・・・・つもりそのアイドルの、、、ね、くびれじゃなくて、もっとあるだろう?大事なことがさ。 例えば? 例えば・・・、おっぱい? 二人向…
心の中は平原があって、平原には無数の池がある。 大きいものや小さいもの、魚が住んでいるようなのもあれば、苔の一片も生えていない寂しいものもある。 石を抱えて歩いていると不意に手の力が抜けて無数の池の内の一つの池に抱えていた石が落ちてしまう。 …