2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧
ミスタードーナッツを曲がって、コンドームが捨てられている細い並木道を抜けると、何軒だかまとまった数の飲み屋らしきボロい家屋が、うなぎの寝床のように続いている一角にでる。 「まさか、ここいらのどっかの店で、バーテンでもやれってんじゃないよな?…
ボクが通っているクリニックは石神井公園にあるのですが 待ち時間がとっても長いです。 先生が二人いる時でも、1,2時間はざらで、今日なんて朝の9時から並んで 薬をもらったのが夕方の4時です。 みなさんも同じくらい待たされていますか? それでいつも困…
精神疾患にかかる人は、まじめな人が多いという。 自分を見つめなおしてみるに、そんな気配すら感じることができません。 時間にはルーズだし、大切な約束すら守れず、ルールを遵守するのが嫌いで いつも集団からはみ出してしまう。 はみ出したらはみ出した…
成田空港に着くと、トイレに入ってトランクを開ける。 「おい、生きてるか?」 ペンギンはタオルに包まったまま、すやすやと寝ていた。寝息が魚臭い。昨日食べた鰯のせいだろう。 ペンギンの指図で日本に帰ってきたオレ(とペンギン)。は、とりあえず赤坂の…
3月3日 22時頃。 暖簾をくぐって引き戸を開けると左右にまっすぐ屋台が並んでいる。 一昔まえに流行った屋台村だ。 高校の卒業式を終えたオレは、同じ高校を卒業した女と飲みに出かけた。 女とオレは付き合い始めてちょうど半年位だった。 繁華街がある駅の…
岐路 ―――― 本通りから分かれたわき道。横道。 3月4日。4時ごろ 淡いブルーに染まった早朝、東海道線が通る線路から100mも離れていない、小学校の前。 一台の自転車が倒れている。 電信柱にぶつかって砕けたライト、倒れたはずみで皮製のサドルはアスファルト…
最近、特にこれという理由もなくレイモンド・チャンドラーの小説をよく読む。 たまたま近所のBOOK OFFで100円で購入できる機会に幾度か恵まれたことがきっかけだけれど、 実際に触れてみるといわゆる探偵物やハードボイルドがこの作家を端に発していることが …
ペンギンはオレに向かって毎夜何かの教訓話をたれる。 「いつか、君に言ったと思うのだけど」と毎晩似たような講釈をたれる。 「こんなによくしゃべるペンギンに会ったことがないよ」あきれて、こう答えるとペンギンは決まってこう返す、君はいままでしゃべ…
「君はつまり、想像と妄想の相の子というわけだな?」 オレはペンギン相手にウィスキー・コークを飲みながら訊いてみる、それとなく。 「言葉に気をつけやがれ、このご都合主義野郎」 2日前に買ったビーフジャーキーをものすごい勢いで食べながら、勝手気ま…
二通の手紙に目を通してから、オレはまぶたを揉んだ。 目玉が親指の動きにあわせてブニブニと形を変えるのがわかる。 やれやれだぜ。 オラオラ千発を食らわせてやりたいと思ったが、目の前にいるペンギンはそれほど悪そうにみえない。どちらかというと、従順…
エイミーの2通目の手紙 「マザーふぁっカー、元気かよ? あたし?あたしは元気だよ、肉体的も精神的にもね、昔抱えていたトラウマ的な観点でみても、あたしは元気さ。 夫とは別れて今は香港に住んでいるの。 ここはフィリピン人とアフリカ人がいなかったら、…
エミリーからの手紙 「ハイ、ヤス、元気にしてる? 私はいま、東京の府中にあるマンションで、夫と二人の子供と生活してます。 ここでの生活は、あなたと過ごした伊豆での生活と較べると、いささか味気ないものです。生活に不安などかけらも見られませんが、…
・・・と、普通の話だとここでけりがついてしまいそうだが、 カウチの場合、そう簡単に話が進まない。めでたしめでたし、で何でも終われるほどこの世は単純にできていないようだ。 本当ならば、各登場人物の後日譚を書いておけば事足りるのだろうけど、I me …
「ふーん」エミリーがため息とも感嘆ともつかない声を出すと、オレは一口ビールをあおった。 「そういうわけで、オレの経営再建のミッションは終わった」げっぷ交じりに言うとエミリーは自分のブラッディーマリーをストローでかき混ぜながら、口はしで笑った…
ジャマイカに飛んだオレを待ち受けていたのは、ドレッドにしない攻撃のおばちゃんたちと、草あるよぉ攻撃のにいちゃんたちだったけど、それ以上に興味をそそられたのは、あのズッチャズッチャのリズムが、かりそめのリズムではなく、ジャマイカ全体に蔓延す…
レゲエ、がオレの心をとらえた。 ここを日本レゲエの聖地にしてしまおう。 オレは有紀に電話する、もしもし有紀、オレだけど。 板長の不在から生じた軟弱な体制のホテルビジネスの実態は、明らかに巨大なバックボーンを必要としている。 ことと次第を話すと…
旅行に対する‘オレ’の考察 何ゆえにオレは旅行するのか? オレはいったい旅に何を期待している? オレの旅行というと、それは22歳の時にした世界旅行が最後になる。 それは現実逃避の現実的な形だった。 現実逃避 ――― 今ある状態から逃げること。 オレの今あ…
女将が言っていたように「いい板前に当たるのは宝くじに当たるようなもの」のようだった。林君を辞めさせた後にも何人もの板前が来たが、どれも使い物にならなかった。 たいていは口だけの能無しか、腕はいいのだが、休み勝ちだったり、反抗的なはねっかえり…
板長の不在は、予想以上にホテルの雰囲気を変えた。 「改めまして、ホテル『タータン・チェック』にようそこいらっしゃいました。私がお客様の客室係を勤めさせていただきます、正子でございます」 この間まで秋ごろのやぶ蚊みたいにか細い生き物だった、正…
今回で、この話は終わる。 予想していた以上に長引いてしまい、自分でも驚いている。 一匹の羊のたわごとはある結論を今から導き出す。 ★★★ ビートルズの破壊者としてのピストルズの圧倒的な成功がもたらした、強力な地盤を引き継いだオアシスは、再び時代の…
勇気付けから突き放しへと、ブリット・ポップは変質した。 「とにかくオレたちは、一人なんだ」 完全な個人主義の到来。21世紀は「人間は個人」であって、何ものもそれを侵すことはできない。 孤独な考え方じゃないか。 ボクは、20代前半の時に、そんな風に…
前号に「『OASIS』について書くことはない」と書いたが、それは「OASIS」というバンドとボクとの関係をうまく語る言葉を知らないというだけで、彼らの歌について全く書くことがない、と言っているわけではない。 例えば、彼らの代表作の中に「Live forever」…
1996年、ボクがイギリスに渡ったとき、人々はもちろん、エルビスになんか目もくれていなかった。 「OASIS」 このバンドについて今のところ語ることは、ない。 断っておくと、ボクはこのバンドを誰よりも愛したし、誰よりも憎んだ。だから決して悪い意味には…
「 Tutti frutti(トゥッテイ・フルッティ)」 リトル・リチャードの'55年のヒット曲をエルビスがカヴァー。 「Wop bop a loo bop a lop bam boom!」と軽口な呪文で始まり、一小節ごとにマシンガンのような鋭いギターのカッティングが追いかける。 聴いてい…
ボクの音楽体験は「レイ・チャールズ」から始まる。13歳の頃だ。 サントリーウイスキーのCMでレイがカヴァーした、英語版「いとしのエリー」を、(どういう訳か)いてもたってもいられないほど、欲しくなったのだ。 歌詞を忘れちまったんじゃないか、ってほ…
文学に限らず、写真、映画、建築、音楽などの文芸活動は、いまやその活動フィールドを欧米に移しつつある。 川端康成、黒澤明、三島由紀夫、岡本太郎、イサムノグチ、村上隆、坂本龍一、村上春樹。 数え上げればきりがないけれど、欧米文化人の審美眼に適う…
このブログ小説&エッセイを始めて、一年と半年が経ち、そろそろ親しい人間に読んで感想をもらおうと 何人かの仲のよい友人にアドレスを教えた。一月まえのことだ。 一週間と経たないうちにさまざまな反応が返ってきた。 ボクの友人は写真家や映画監督、ミュ…