2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

そうか、そういうことだったのか。風の歌を聴け、はそうだったのか。 #1

サリンジャーの娘の書いた「わが父サリンジャー」にするか、この本にするかでずいぶんと悩んだ。 ふと、その本の下の段にあった「おサルの系譜学」に目が移った。先週まで入口にある<新着コーナー>で埃を被っていたものだった。たしかその時は、一度ペラペ…

ワタナベくんが直子の死を知ってから、落ちていくところ

なぜ、そんなことになっちまったのか。俺にも理解はできなかった。こうもあっさりと首吊り一つで、本をよんだり、映画に行ったり、胃が輝きだすくらい美味しいフランス料理を味わったりだとか、そうしたことができなくなってしまうだなんて。控え目に生えて…

工場員「異人伝」を読んでみて

「十九歳や二十歳で、よほどの天才でもない限り、小説って書けないんだよ。例えば十年以上、肉体労働してるとか、なんだかんだで最低底の人をたくさん見てないと、ちゃんとした小説は書けないよ」 第百三十回の芥川賞(金原ひとみ・綿矢りさ)の受賞に対して…

果てしなく長い10分

ある工員にとって、 通勤電車は激しい苦痛を齎す、 厄災の詰まった玩具箱みたいなものであった。 伴う苦痛の激しさたるや、 僅か10分の間で工員の顔を別人のそれに代えてしまうのである。 額から流れ落ちる夥しい量の汗が冬場にも関わらず工員の肌色のワーク…