あまりに酷かったので少しだけ言うつもりが結局言い過ぎてしまう結果に終わる、個人的な感想と哲学の押し売りについて

想像力だよ。
僕はヒロに言う。「想像力なんだよ」
もちろんこれだけでは何の意味もなさない。僕はさらに説明を加える。
「ただの想像力じゃだめだ。それは伝わってこなくてはならない」ナイン。まだ抽象的に過ぎる。
「つまりさ、監督だね。クリエータ、アイディアソース、神」
キャストはプレーヤーさ、ブラッド・ピットジョニー・グリーンウッドモーガン・フリーマントム・ヨーク、デビット・フィンチャーはナイジェルゴッドリッチ。さあこれでなんのことかわかるだろう?
ヒロは僕が何を言っているのか理解出来ない、とはっきり言葉に出して言う。「兄ちゃん、ごめん、ぜんぜんわかんないや」
僕は冷蔵庫から湯煎して皮むきした小エビを出して、オーロラソースも取り出すと、二つをボウルに空けて大降りのサラダスプーンで勢い良くかき回す。味見をしてから少し塩を振りかけて、もう一度味見をする。程よい塩加減と酸味に味蕾が反応し、アルコール!と叫んで流しの下から昨日買ってきたばかりの、チリ産のミゲルトーレス、2007を探し当てると、ワイングラスに乱暴に注いだ。グラスの縁からこぼれたワインがガラステーブルの橋に溜まりを作ると圧力に負けて一週間前に買ってきたばかりの無印良品のラグの上に滴る。ああ、滴る。
部屋には聞こえるか聞こえないかという位の音量でビートルズの「Sexy Sadie」がリピートで流されている。
「Maharishi, you fucking cunt...Who the fuck do you think you are?」ブート盤のマハリシ罵倒バージョンだ。
「つまり」僕は言葉を足す。全く無駄な、誰も訊いていない、繰り言世迷い言と知りつつも抑えることができない。「君は、もう少し注意深くなるべきだ」
弟は悲しい顔をしている。「ジャケ買いもいい。だが、たまには、だ。いつもじゃ困る」
「映画を借りるのと音楽を聴くのは全く同じ行為だ。セックスと食事とは違う」ヒロちゃんはそこに関しては即座に是、首を縦に振る。そうだそうだその通りだ。といわんばかりに。
だから、誰が歌ってるのか、また誰が監督しているのかを見ないなんて、CD屋に行ってタイトルとジェケットだけで選ぶように危険な行為だよ。君もそろそろそれを学んだ方がいい。ひどく、とっても簡単なことだからさ。





そんな風にして2011年は終わった。