2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

8話

土曜日の朝、俺の部屋の扉がノックされた。 「誰?」前日も遅くまで酒を飲んでいたから少々不機嫌。我ながら声が尖っている。 「俺。しんすけ」昨晩、たっぷりと部屋でグリーンラベルをご馳走になっていたので開けないわけにはいかず這いずるように起き上が…

7話

少し俺の話も。 時は、2004年4月。 六本木ヒルズがオープンしてちょうど1年を迎えた月。 俺はオープンから1年勤めたその不夜城のテナントのひとつである中華料理屋を辞めて、京橋にある商社で働くことになった。 商社といっても社員は社長と俺を含めて4人、…

6話

緑の家に越してきたしんさんが最初に捕まえた女はみさおだった。 みさおは北海道出身で、しんさんが越してきたときにはドミトリーに住んでいた。 ドミトリーというのは、本館から独立した、2段ベッドが2つあるほったて小屋で、1日単位で宿泊することができる…

5話

引越しが完了するのを見届けてからしんさんが暮らすことになる、211号室に遊びに行った。 「おつかれ~」グリーンラベルの500ML缶を3本もって部屋をノックすると、大ちゃんが顔を出した。 告白すると俺は彼の笑顔に弱かった。なんなら子供をひき逃げしたと告…

4話

たしか、しんさんが俺が住んでいた「緑の家」にやってきたのは夏の終わりごろだった。 たしか、ひどく暑かった日の夕方で、夕立が去ったあとに、管理人の長谷川が軽トラで帰ってくるのが、眼下に見えた。助手席から降りてきたのがしんさんだった。丸刈りで、…

3話

「しんさん、おはよう。ある?」部屋をノックするとしんさんはすぐに出てきた。 「あるよ」しんさんの部屋にはちょっと大きめのスピーカーと革張りのソファーがあった。スピーカーからは雑音のような音楽が流れている。旋律と呼べないこともないレベルのオー…