2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

the 11th story ~てんてろてんとした映画~

「てんてろてんとした映画」 男と女が一緒にいる。 女は携帯電話で誰かと話をしている。男は女に背を向けてパソコンに向かってひたすら文章を書いている。 女「なんかもめたみたい・・・」 男「・・・・・」 女「そうだね」 男「・・・・・」 女「穴開いちゃ…

第十八章

茫然自失。 羊は「Waking life」に文字通り、衝撃を受けた。そして傭兵が言うエントロピーの世界観と彼が言った羊の人生の最も影響を与えているだろう“誰か”に思いをめぐらせた。 さて、と羊は思う < さて、ボクは、特定個人でないにせよ、社会や組織やコミ…

第十七章

「つまり君はCLUB Caveから出て、気が付いたらバスに乗っていた、と」傭兵はヨーグルト食べながら、訊いた。「CLUB Caveとバスにはなんの共通項もない」 「ええ、そうなんです」羊は、牛乳を片手にメロンパンを齧っている。さっきから羊は、全く牛乳とメロン…

第十六章 er&#39; ling pa

頭を金槌でかち割り、もろ手で中身をごっそり抜き取り、ピンク色したヌラヌラの脳みそをちょっと大きめのビニール袋に入れて、口をしっかりと縛る。そいつを両手でしっかり持って、オラオラオラぁと気合の入った掛け声と共に、振り回した感じ。 そんな感じで…

the 10th story ~ 可愛らしさ もう一歩 ~ 下

それじゃ、また。 ミッキーは車に向かっていうと、店に入ってきたわよ、ずうずうしく。 「一体どういうこと?今日も遅刻だわ」あたしは、額に皺を寄せていたと思うわ。それなのにミッキーのあんぽんたんったら、時計を見て、一分の遅刻、許せないわけないね…

the 10th story ~ 可愛らしさ もう一歩 ~中

ミッキミッキミッキミッキミッキミッキーマウス M I C K E Y M O U S E ♪ これだけで「フルメタルジャケット」が浮かんじゃう人だったら、絶対にあたしともめたりしないのに、残念ながらミッキーはスタンリーキューブリックなんて知らなかったし、ウディ・ア…

the 10th story ~ 可愛らしさ もう一歩 ~ 上

よし、今日も朝なんだけど、私は美容師。スーパー美容師とまと。“とまと”はひらがなで“とまと”。 可愛いでしょ?でもなんだってあたしにこんなけったいな名前をつけたのか、父さんに詰問してみたところ「いや、生まれた時にとまとが赤かったから」。あきれて…

第十五章 子社長の趣味

緑屋商事2代目社長は(元社長と言うべきか)、通称“小社長”と呼ばれていた。所以は父の大社長よりも身長が20センチも低かったことが大きな理由だった。チビという言葉に異常なコンプレックスを有していた社長が、近しい人間に自分を小社長と呼ばせていた所以…

第十四章 シン

毎週土曜日になると、驚くほど沢山の人たちが《 元緑屋商事 社員寮 》を訪れた。 それも10や20なんて数ではない。 一度暇な時、羊はその数を18時頃から数えたことがあった。23時までに合計70人という人たちが一階の入り口から姿を消した。そして彼らは朝の6…

第十三章 図書館の彼女のその後

3月に羊が学校を卒業してから、女の子は不当とも言えるほどの喪失感を抱えて静かに生きていた。校舎の隅に忘れられたように佇む木製の1階建ての建物、図書館に守られながら。 女の子は授業が終ると友達に挨拶すらしないで、図書館へ足を運んだ。そして片端か…

the nineth Story~ みみず城~下

それはアイスランドに聳える白い城だった。吹雪にも凍らず、紫色のライトで照らされた不気味な城。城は少年に向かって笑い声を上げていた。 少年は夢から醒めると、中心の政府にそういう城がないか、連絡してみた。一報を聞いた中心政府の役人は大笑いし、す…

the nineth story ~ みみず城~中

カトウは決断力と行動力を備えていて、ナガイは優しく静かな青年だった。二人はマイコが現れるまで大変仲が良く、暇を見つけては音楽を奏でたり、詩を読んだりしていた。しかし蜜月は終わりを迎えようとしていた。 ある日、ナガイとマイコが河原で交わってい…

第十二章 ごみ掃除

「そうそう羊って言えば、電気羊でしょ?それから羊をめぐる冒険」ポンは饒舌になっている。何か、薬をやっているのだ。 ポンはヤク中である。国家公認のヤク中。それがポンだ。彼は自分の持っている精神学的知識をフル活用し、精神病院やらインターネットで…

第十一章 ポン

重苦しいノック音が部屋に響く。 ゴンゴン・・・ゴンゴンゴン。 羊は本を読むのを止め、ドアの方を見る。誰かがドアをノックしている。 誰か来たのは間違いない。誰だろう? ノックは猶も続く。 ゴンゴンゴン。 しかし音は決して脅迫的ではない。むしろ、出…

the nineth story ~ みみず城~上

「みみず城」 難攻不落と誉れ高きみみず城・・・か。 西暦3448年―――――――――――――― 黒い巨星の来襲に遭った地球は、文字通り、滅びた。 しかしまぁ、人間はしぶとく生き残っていた。総人口は、そりゃ減ったけど、そこそこ残っていた。そして「結構滅びたなぁ」…

第十章 《 (元)緑屋商事 社員寮 》 ~ 25 strange stories 再び

「おお!」ハルキンの嬌声が鼓膜を劈く。 「これ25の奇妙な話じゃん、どーしたこれ?」 羊は《 (元)緑屋商事 社員寮」 》の自室で、下に住むハキルンの来襲を受けている真っ最中。 「高校に入る時、地元の図書館で借りたっきり、ウチにあるんスよ」羊は敬…

第九章 遭遇

4月29日 万時が順調に進んでいるように思えた。 試験も一発で受かった。 学校は地元の商業高校のような、微妙な華やかさもないし、工業高校のように髪を逆立てないと、ただの馬鹿だと苛め抜かれるようなこともない。ごく普通の学校だ。 その春は毎日が気が狂…

第八章 羊の卒業式

羊みた様な生徒にとって最もややこしい行事の一つに、入卒業式が数えられる。 いわずもがな、羊は決して社交的な分類に選ばれないタイプの羊だ。群れることを嫌うし、自分が偶蹄目であることを恥じている。 それが何故なのかについて、羊が語って聞かせる機…