2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

第七話

沈んでいく。 そんな感慨に真は浸っていた。 目の前では茶色と白の残像が揺れている。 背骨を通じて鈍い信号が、揺れにあわせて、伝わってくる。 腋の下にたまった汗が一筋二の腕を伝ってシーツに滲んでは消えた。 漆喰の壁一面に赤いペンキを垂らしてある部…

第六話

日記を閉じると私は深呼吸をひとつした。 部屋は静まり返っていて壁ひとつ隔たったキッチンで唸っている冷蔵庫のラジエーターの音以外は何の音も聞こえない。 MDコンポの再生スイッチを押すとしばらくしてからチェロがかすかに響いてきた。 ♪ 'Cause it's a …

第十三話

なべに湯を沸かして、そこへ蕎麦を放り投げる。菜ばしで軽く2,4度かき混ぜて蓋をした。 冬は蕎麦が美味しい。冷たい水のおかげだ。 薬味として白髪ねぎの刻み、すりゴマ、卸がねで擂った山葵。 蕎麦つゆには鰯と鰹の白だしをミックスし最後にたまり醤油を煮…