2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

第十六話

「それこそさ、バチバチで行っちゃえばいんじゃないかい」 「やっぱそう思う?」 「うん、それがいいと思うよ」 「でもそういうのって急になんかやるのも恥ずかしいやんか」 「そうか?別に恥ずかしくはないけど」 「私だけ特別なんかな?」 「いや、そんなこ…

体調不良の工員

工員は、原則的に、仕事を休まない。 そんなことをすれば他のラインとの調整が取れなくなるため工場の稼働率が下がるからだ。 しかし実際には、そんなことは起こらない。 工場は仮に工員が休んだとしても稼働率を下げることはないからだ。 つまり、誰かがそ…

入浴

工員が住んでいる寮にはバスタブが二つある。 仕事が早く引けた日の工員たちのたいていの楽しみは、飲酒と入浴である。といっても飲酒派は帰宅が遅くなるので、この工員(早く帰ってきた)さっそく湯船に湯を張りはじめると、右足でゆっくり浴槽をまたいだ。…

ある工場員の考えたこと

さいきん食事時に「いただきます」と口では言っているけれども、心から思っていない。感謝という気持ちがあまり起きない。 「ちょうし乗ってんじゃないの?」 「そうかもしれない」 改めたときにはもう遅かった。携帯が壊れてしまったのである。 これは控え…

第十一話

松原が狭い玄関をくぐると、管理人の長谷川は震えだした。私はそれを目の前で見ていたから知っている。 「もうだめよ~。地球が・・・地球が壊れる・・・」 「何やっとんねん」松原は長谷川の胸倉をつかむと、次の瞬間ゆっくりと抱きしめた。「何やっとんね…