2011-01-01から1年間の記事一覧

あまりに酷かったので少しだけ言うつもりが結局言い過ぎてしまう結果に終わる、個人的な感想と哲学の押し売りについて

想像力だよ。 僕はヒロに言う。「想像力なんだよ」 もちろんこれだけでは何の意味もなさない。僕はさらに説明を加える。 「ただの想像力じゃだめだ。それは伝わってこなくてはならない」ナイン。まだ抽象的に過ぎる。 「つまりさ、監督だね。クリエータ、ア…

王子五丁目団地の怪

まずは王子五丁目団地の話から始めたい。東京メトロ南北線の王子神谷駅から徒歩1分、 住戸数2221の巨大団地である。テニスコートと遊技場とよべないこともない小振りな広場を ぐるりと囲んで3棟の建物が直立している。突然だが、建設を企図した方の浅薄が恨…

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布原はその時22歳だった。東京大学を受験するため上京して以来東京に住み着いている。東京へ出てくる数ヶ月前に亡くなった祖父が少なくない遺産を彼のために残してくれたおかげで彼はこの年までいっさいの労働を忌避することができた。それはある意味大変…

初恋っていいもんだよね

工場員は小学校4年生のころ、転校してきたある少女に恋をした。 個人宅が鬱蒼と立ち並ぶ町内を出て、学校へと向かう朝、今じゃコンクリートの中で育てられている田んぼの塀のわきをすり抜けると十字路に出る。小川が流れている、十字路。で、工場員と少女は…

第44話

レースのカーテンがひらひらと揺れる様を飽きもせずずっと見ている。 ここ北品川病院211号室には他に3人の入院患者がいた。各人各様の病を背負っており、その見舞客も異なっており、三日と置かず訪ねてくるものもあれば、1週間に1度だけ仕方なくといっ…

実家に帰った工場員

4ヶ月ぶりに実家に帰った工場員の目にしたのは泥酔した両親だった。 深く眉根に皺を寄せた父親は開口一番「お前らが帰ってくるとマイナスなことばかりだ」と、酔った勢いなのか、本音なのかそういった。思い当たる節がないでもない工場員は絶句した。 そうか…