番外編 昔の話 その1

人口20万人都市というとだいたいどのくらいかというと、東京ドームでいうと4個分。
東京都の区でいうと、渋谷区の人口くらいだ。

渋谷区の面積が15㎢であることに対して、私がこれから述べようとしているN市は200km2ほどの大きさで、10倍以上の広さということになる。
少年たちの政治で言えば、校区ごとにボスが現れ、よほどのことがない限り他校とのケンカということにはならない。翻って渋谷のごときサイズでは常にケンカが発生するという事態になりえるし、伝え聞くところ本当にそうだったようだ。

しかしながらN市はどういうわけだろう。県下のほとんどの都市が海に面しており、猟師街として栄えた土地柄か、はたまた単なる偶然か、駅で待ち合わせをしていれば、急に胸倉をつかまれ「いまガンつけたろ?」とあやをつけられるし、街の中心街をあるけば、肩がぶつかった、足を踏んだ、この間見たとかそんな理由でケンカを吹っかけられる。自転車数十台で対抗する中学へ乗り込んでいったり来たり、いつかのケンカの報復と称して負けた方の兄貴(やくざ)がBMWでたまり場へ乗り付けてきたこともあった。

他校のみならず1つ年上であった先輩諸氏が寄ってたかって生意気だという後輩をリンチし、その数か月後、暴走族に加入した被害者生徒の一人が、仲間を引き連れて逆にその先輩方が一人ずつ、リンチして回るということもあった。

これは、そんな街のある学校でのある日の話だ。