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ジャマイカに飛んだオレを待ち受けていたのは、ドレッドにしない攻撃のおばちゃんたちと、草あるよぉ攻撃のにいちゃんたちだったけど、それ以上に興味をそそられたのは、あのズッチャズッチャのリズムが、かりそめのリズムではなく、ジャマイカ全体に蔓延する胎動と呼ぶに相応しい恒久性を示していたことだった。

帰国したオレはジャマイカで雇ったペインターにホテルを塗り替えさせ、これまたジャマイカで雇った空間デザイナーにホテルの内装を変えさせた。正直、その出来上がりには疑問があったがマスコミは面白がってこぞって伊豆に集まり、ホテル「タータン・チェック」の宣伝をしてくれた。

料理は伝統的な禅foodに少しの魚介類と肉を加えたものを出し、イタリア、フランス、チリから集めたワインとアフリカの木の実からできたさまざまなスピリッツやリキュール、中国茶などをふんだんにつかったカクテルを配した。世界中のミネラルウォーターを集めることも忘れなかった。

布団はすべて麻製のものに替えて、浴衣代わりにタイから仕入れた綿製の衣類を出した。タオルは環境保護から持参を呼びかけ、ロハス好きな若者が全国から集まった。
ルーマニアの泥を使ったエステは、企画のうちでも好評だった。

客室係は、基本的に私服で喫煙や飲酒も許し、フロントに立つ女は年がら年中ヘッドフォンをつけていたが、特にとがめることをしなかった。
屋上にはデッキ・チェアーを置いて、各室のベランダには望遠鏡と水パイプを設置した。全室にネット環境を整備し、スピーカーからは世界中の音楽がいつも流れていた。

そんな訳で、2005年に1億だった収益は5億に膨れ上がり、一部屋が生み出す利益は年間4000万近くなった。つまり年間を通してほぼ満館の日々が毎日続くようになったということだ。

オレは、成功した。