★ 01019

・・・と、普通の話だとここでけりがついてしまいそうだが、
カウチの場合、そう簡単に話が進まない。めでたしめでたし、で何でも終われるほどこの世は単純にできていないようだ。

本当ならば、各登場人物の後日譚を書いておけば事足りるのだろうけど、I me myselfのことに関しては、そうは行かない、行かせない。

                             ★★★

ブルガリアヨーグルトを掬う左手に痺れが走ったのは、朝の五時だった。
その時オレは部屋でファットボーイ・スリムのベスト盤を聴きながら近代社会の行く末を案じていた。西田幾多郎の本を読みすぎたせいかもしれない。
発狂しそうなほど精神が高ぶっていたところへ差して、携帯電話が鳴り響いた。
「もしもし」しばらくの沈黙の後、聞き覚えのある声が受話器を震わせた。兄貴だった。
シドニーの※●□△に明後日までに来てくれ、旅費は全部、オレ持ちだ」寛大ではほとんど知られていない兄貴にしては破格な待遇だった。

オレはオーストラリアに飛んだ。