☆ 001

ミスタードーナッツを曲がって、コンドームが捨てられている細い並木道を抜けると、何軒だかまとまった数の飲み屋らしきボロい家屋が、うなぎの寝床のように続いている一角にでる。
「まさか、ここいらのどっかの店で、バーテンでもやれってんじゃないよな?」
エレコムはそれには応えず、飲み屋街をくるくる歩き回った。そしてふと思い出したように一軒の店の前で止まると、引き戸を開けた。扉は白く塗ったペニヤ板を張り合わせたもので鍵はかかっていなかった。扉には焼き鏝でつけたような焦げ目がついていて、そのゴミみたいな溝をよくみると「倶楽部 洞窟」と書いてあるのが、かろうじて読めた。
「君はここでバーテンダーじゃなくって、ビアサーバーになる」
「?」
「ようするにビールだけ注いでいろ、ってことさ」

オレは、ビアサーバーになった。