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エイミーの2通目の手紙

「マザーふぁっカー、元気かよ?
あたし?あたしは元気だよ、肉体的も精神的にもね、昔抱えていたトラウマ的な観点でみても、あたしは元気さ。

夫とは別れて今は香港に住んでいるの。
ここはフィリピン人とアフリカ人がいなかったら、本当にスカスカの街よ。
文化も文明もあったもんじゃねぇし、ゴキブリでかいから、そろそろシンセンに越すつもりなの。

あんた、オーストラリアに引っ越したんだって?まったくいつまでも男やもめやってる場合じゃないっつぅの。それくらい、もうわかれっつぅの。何回いったらわかんだっつぅの。

ところで、あのペンギンだけど、まだそっちに着いてないの?
こっちで最後に見かけたのが最初の手紙を書く数日前だったから、もう着いていてもいいはずなんだけど。やっぱりちょっと遅れたのかな、潮の流れとかで。

まあ、とにかく仲良くやってくださいよ。それほど悪いペンギンなはずもないし、餌代だって日本よりはオーストラリアの方が安いと思うんで。

時にさ、ロシア文学を読んだ後にアメリカ文学が読みたくなるのって、あたしだけ?
さいきん「サイダー・ハウスルール」にこんな文句を発見したの、聞いてよ。
“糞する気が失せたなら、便器から降りろ!”ってね。もちろん、英語で読んだのよ。

あなたもやる気がなくなったら、さっさと舞台から降りた方が身の為よ。
あたしはもう降りるから。

人間って、時に決断力が何よりも必要なときがあるのよ。 本当に。

さようなら、本当に、 さようなら。」

エイミー
2010年 8月15日