#練習用

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布原は時子と結ばれると、大学進学をあっさりあきらめた。 「なんかね、どーでもよくなってしまったんだわ。というのもね、大学ってのはさ、特定の会社に入るための資格センターみたいなもんじゃない?頭の良しあしでまず篩って、偏差値の高い人は上場企業、…

14話

家族を捨ててから数年後、大ちゃんは2種免許をとって介護タクシーなる商売を始めた。Facebookでその情報をみた俺はあきれてしまった。自分の家族も救えないやつが、人の世話だって?悪い冗談かよ。 数日後、たまたま真と洋平を会う機会があったのでそのこと…

3話

「しんさん、おはよう。ある?」部屋をノックするとしんさんはすぐに出てきた。 「あるよ」しんさんの部屋にはちょっと大きめのスピーカーと革張りのソファーがあった。スピーカーからは雑音のような音楽が流れている。旋律と呼べないこともないレベルのオー…

どこまで行ったら気が済むのだろう

去年、ユダヤ系投資銀行を”卒業”した私は、広尾にあるお気に入りにレストランの近くに事務所を構えた。青色のオウムを受付に据え付けて、籠の脇に棕櫚の木を二本おいて、窓ガラスは知り合いの職人に頼んでステンドグラスに代えてもらった。 部屋の真ん中には…

快適な時間なんて訪れた試しがない

目が覚めると、携帯電話の電子音が枕の裏から、鼓膜を直接刺激するみたいに、ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピ、っていつまでやらすねん。 とにかく、目が覚めた。 「もしもし」時計を見ると5時を過ぎていた。 「そろそろ起きろよ。あの日だぜ」ユニョは言った…

「仕事柄、色々な国の人間と知り合う」 大親父は言った。 大親父は「貿易商人」という華僑系企業の重役を任されていて、当人に言わせれば、仕事柄、色々な国人々と知り合った、ということだ。 「我々は、なんでも送るし、なんでも受け取る。どこのどんなもの…

あったかいやつ

ある月曜日。 私は、長年のフリーター生活にあきらめをつけて、とある企業に就職を果たした。 新しい銀行口座をつくり、社会保険にも加入し、長く滞納していた住民税を払い始めた。 その会社の私が勤める部では新しく事業部長に就任した「鳥越」という男が辣…

健康を害した彼女

ありふれていると言えばありふれているし敢えて書くまでもないかな、と思いながらも無視し続けることが難しいのが、彼女の体調不良についての考察だ。そのことで心を痛めているフェミニストのなんと多いことか!頭痛や腹痛はもとより、疲れた、足痛い、眠い…

買い物

コンピューターの画面の前でうなっている。 私の姿しかオフィスにはなくなってしまった。もう23時を回ったのだから当然だ。 私は煙草の箱を取り出すと一本に火をつけて宙に煙を吐く。禁煙のオフィスで吸うタバコ、また格別なりけりかりこり、きれかれこお、…

頭の中の箱

朝目が覚めると冷蔵庫までひとっ飛び。 グラスに氷を、 カラコロカラコロ、 ジンを並々、 サイダーを溢れさせ流しを汚し、 仕上げにレモンジュースを垂らせば、 トムコリンズの出来上がりです。 テレビをつけると扇風機を回し、 昨日を私は聴き始めました。 …

第十三話

なべに湯を沸かして、そこへ蕎麦を放り投げる。菜ばしで軽く2,4度かき混ぜて蓋をした。 冬は蕎麦が美味しい。冷たい水のおかげだ。 薬味として白髪ねぎの刻み、すりゴマ、卸がねで擂った山葵。 蕎麦つゆには鰯と鰹の白だしをミックスし最後にたまり醤油を煮…

out

僕は人生とは、苦しいものだと思っている。基本的に、ね。 この基本的、には、生活全般の辛さ、つまり社会的側面の辛さと、個々人が持つだろう哲学的-ないし、宗教的-辛さ、が内包されています。あくまで説明書風に。使用上の注意をよく読み、用量・用法を…

ボクが空腹だった間

食べ続けてもう3日になる。 扉を叩く人があって玄関まで行くと、ピザ屋の出前だった。 「鈴木さん、これで何枚目ですか?」 「7枚目かな。悪いね、何度も」 スクーターは走り去り、ボクは温かいピザの入った箱を床に置くと猛然と食べ始める。

彼と散歩中

「人間というものは、おぎゃあ、と産まれたその瞬間から、生死病苦、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦などの四苦八苦を背負って産まれてきたのであり・・・」 さいきん彼が町田康に嵌っていているらしく、うざい。 今も隣で上みたいなことを言ってく…

情熱の薔薇

ひさしぶりにこの曲を聴いて、なんだかちょっと癒された。 ブルーハーツって「ガキ的反抗心」の表れみたいな偏見を持たれている方も いらっしゃると思うのだけど、尾崎豊とはちょっと違う意味での、青さがあるんですよ。 若さというか、ね。 ボーカルのヒロ…

Super dry

もっと楽しくなりたい。 それが禁断症状の始まりである。 もっと楽しい? いったい何が“もっと”で何が“楽しい”なんだろうか? 足りない? タリナイタリナイ。 いつでもひどくdry。Super dry。 体が覚えているある状態。あの状態。この態。

感動。絶望感、排他的ムード。

人々に軽口で色々なことを吹聴しているうちに、何が本当のことだか分からなくなってきた。 そもそも本当とはいったいなんなのか。仮に何かの物事で(例えば音楽なんかで)、リアルだな、なんて感じる瞬間があっても、リアルと感じる自分すら、そんな認識の第…

気の合わなくなった友達とのこと

誤解しないでいただきたいのですが、ボクは彼のことが嫌いなわけではないのです。 これは誓ってもいいけど、本当の話です。 でも彼の何にも興味が持てなくなってしまったのです。それも突然。 昔はさもない話で朝まで語り合えた仲なのだけど、それもセピア色…

wants

こんな朝にはお前が欲しい。 お前だって? お前って誰だよ? お前はどちらかと言えば指示代名詞で一般的なあんた、あんた。 不遜な呼び方だな、あんたなんて。いったい自分は何様のつもり? 何様のつもりなんて言ってるあんたは何様のつもり? ちょっとした…

あいあむ羊

一時的なことだとは思うんだけど、活字の世界で自由に動いている実感がしっかりとある。 手に取れるくらい、持ち上げてぶん投げられるくらい、はっきりと目の前にある。 なんとも言えない。気持ちが良くて、本当に。 じつに自慰的な快感です。が、

思考の鉱脈

ふつふつ、と気持ちのよい音を立てながら、思考の鉱脈から、創造物が湧き出してくる。 ボクはそいつを両手で掬い上げると匂いを嗅いだ。 いいにおいだ。 ボクの中でじっくり熟成された創造物が放つ香り。 意外と、それは無臭で透明で。指の間から零れるサラ…

祝電☆

ボクのかつての恋人が女児を出産! 写メが送られてきたのだけど、本人にあまり似ていないので たぶん旦那さん似なのかな、なんて思った。 奇妙なものだけど、なんかすごく嬉しかった。 ボクは彼女のことを十分理解してあげられたとはいえないけれど、 彼女が…

さびさひ

となりのおっさん。 生活保護受給者である。 御歳かぞえて52歳(くらい)。 かくいう私も無職になって7ヶ月目が経つ現在、未だに再就職のめども立っていない状態で もはや気になることといえば、となりのおっさんの動向ばかり。 おっさんも負けじ劣らずの暇…

わかったから、話を聞いてくれ

机を揺すりながら、男が激しい口調で老人を詰問している。 いったい何がそんなに大事だってのだ。 老人ははげた頭を摩りながら、俯いている。 男は、遊撃の腕を緩めるつもりはないようだ。 一層大きく机を動かすと、編み紐のブーツのつま先で、老人の脛を蹴…

結局のところにある、結局でないもの

私は、非常に頻繁に、嘘をつく。 もちろん、自分に対してだけだ。 人にはしない。 嫌われちゃうから。 嫌われることは、怖い。 人は、それを義務教育を通して学ぶ。 いや、少なくとも、私はそれを学んだ。 私は嫌われ者で、ずっと一人だったのだ。 自分で選…

世界の終わりの言葉

戦いや憎しみや欲望がないということは、喜びや至福や愛情がない、ということでもある。 絶望があり幻滅があり哀しみがあればこそ、そこに喜びが生まれる。 絶望のない至福なんてものはどこにもない。

明日の前に

映画や小説、音楽の中でちょっとシャレた言葉というのがある。 例えば、今すぐに、というべきところをあえて、明日が来る前に、と言い換えたりする。 蓋し、クールである。 まあ、じゃあ、俺もやってみようかなと思い、頭を絞ってみるも、浮かんでくるのは …

ぶっとびやがってるぜ、獅子舞。

って、別段、この季節、獅子舞なんぞ舞っていない。 今日見た、夢の話である。 どういうわけだか、3ヶ月に一度くらい24時間寝てしまう日がある。 原因はわからないのだが、たいてい月曜日に発現しやすく、そんな日は何があっても決して起きることはない。 そ…

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ずいぶん前の話になるけど、別れたガールフレンドに再会した。そのときボクは新しくできた吉祥寺の紳士服店でネクタイを選んでいるところだった。 元気?■◎ちゃん、と付き合っているとき呼んでいたあだ名で声をかけた。彼女は急に不機嫌そうな顔をして、その…

5月25日

今日はとうとう夕方6時起き。 東京へ戻るはずが、もちろん、そうはならなかった。 明日だね。 日記も一日飛ばします。 今朝は、といっても夕方だけど、山芋の味噌汁と麦ご飯、納豆、キンピラごぼう、ひじきの煮物と雲丹。 今から三国志を読んで寝る。 明日か…