あったかいやつ

ある月曜日。 私は、長年のフリーター生活にあきらめをつけて、とある企業に就職を果たした。 新しい銀行口座をつくり、社会保険にも加入し、長く滞納していた住民税を払い始めた。
その会社の私が勤める部では新しく事業部長に就任した「鳥越」という男が辣腕を文字どおり、振るっており、部内の空気は良くも悪くも活性化されつつあった。
そんな最中、鳥越が参加した沖縄の会議に向かう飛行機が墜落し、101人が命を落とした、というニュースを聞いた社員たちは一同に歓喜していて、それがなんだか非常に厭な気分で、私は就職して9週間で社を辞し、またフリーターとして身をやつすことになった。
失職して一週間経った頃、社でいろいろと面倒を見てくれていた鈴木という男から電話が入った。
「実家の屋根の修繕を手伝ってくれないか? 少ないが礼として幾ばくかの給与は発生される見込みだ」一度しか北海道に行ったことがなかったので、エアドゥーに乗って、はるばる千歳空港を降りると、ロシアの漁船が日本の自衛隊の船と衝突したとニュースが流れてきた。