快適な時間なんて訪れた試しがない

 目が覚めると、携帯電話の電子音が枕の裏から、鼓膜を直接刺激するみたいに、ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピ、っていつまでやらすねん。 とにかく、目が覚めた。
 「もしもし」時計を見ると5時を過ぎていた。
 「そろそろ起きろよ。あの日だぜ」ユニョは言った。
 「すぐに行くよ」

俺がサザンクロスの玄関を潜ったのは6時をかるく半分回ったころだった。ユニョは席に座ってジンビームのボトルと一緒だった。 
 「悪かったな」俺はボトルをやつの腕から奪うと一口流し込んだ。 目の裏から白くて細かい光が出たみたいになって、少し涙が出た。
 ユニョは白いスーツに夕方の雲みたいに染め上げたTシャツを着ていた。短く織り込んだズボンの裾から裸足の足が見えていて、毛はほとんど生えておらず、蚊に刺されたあとが2つほどあった。
 「準備はいいかい?」ニニョは煙草をくわえたままいった。
俺が眼で合図すると、ニニョは携帯を取り出してボタンを押して、耳に擦りつけるみたいにあてて、静かな声を出して言った。「これで終わりだ」

ユニョは名の通った呪い屋だった。 彼に呪われたものは、決して次の日を太陽を見ることがなかったという。