買い物

コンピューターの画面の前でうなっている。
私の姿しかオフィスにはなくなってしまった。もう23時を回ったのだから当然だ。
私は煙草の箱を取り出すと一本に火をつけて宙に煙を吐く。禁煙のオフィスで吸うタバコ、また格別なりけりかりこり、きれかれこお、などと呟いてみても、やっぱり、一人は寂しいもので、机の上の携帯電話を手に取ると親しい友人に電話をかけてみました。

「もしもし」
「ああ。あんたか。ああ、どうしたの?」友人は金曜日の夜だというのにひどく酔っ払っている様子でした。いつもならお前、というところを、あんたと言い間違えたのだから、私はいってやりました。「そうとう酔ってるな」
それから当たり前のように、いや酔ってないよ、という酔っ払いの特徴、つまり、酔いの否定を友人が懸命に始めてしまい私はいつまでも本題に入れず、仕舞いに友人は「買い物行こうよ、買い物」と訳のわからないことを繰りかえし言うのです。
「なんの買い物だい?」私は試しに聞いてみました。
「この時間に買えるもんっつたら一つしかないだろ、あんた」