健康を害した彼女

ありふれていると言えばありふれているし敢えて書くまでもないかな、と思いながらも無視し続けることが難しいのが、彼女の体調不良についての考察だ。そのことで心を痛めているフェミニストのなんと多いことか!頭痛や腹痛はもとより、疲れた、足痛い、眠い、腹減った、生理だ!などなど。

とかくに女の児は暮らしにくい。

有体に言えばそれは気の病で、つまり折り紙つきの病気ということになる、と僕は考えている。正真正銘の病気。それが彼女の体調不良だ。

外薬を持ってもそれは決して良くはならない。しかして何故か彼女はピルを飲む。胃壁が紙やすりで擦られたみたいにザラザラとしてきて、それが彼女を不快にする。そして(まるでそれが苦痛を癒やしてくれるのだと言わんばかりにコーヒーを飲む。そしてしばらくすると水を買ってきて胃薬と頭痛薬を飲むわけだ。いいだろう?

もちろん下らない議論は御免だ。おっと、それは僕の方じゃなくて、彼女の方が、ということだ。

それから彼女は深々と煙草の煙を吸い込み、ニコチンでもって薬で緩ませた血管を再び締め上げる。頭痛腹痛腰痛肩こりとの束の間の別離は終わり、彼女は苦痛の日常に還る。

Hi....how are you?

I'm .....fine.

What's been up?

....Well, normal. Get up in the morning, brush teeth, washing the face and go work and, you know?

Yeah, you are living, aren't you.

Exactly.

How about having a cup of tea over there?

Why not?

彼女が指さした先には病院があった。開ける度にキィキィとなく鉄門の医院で、名前を楠医院といった。僕は彼女より先に門をくぐると受付に座っている40過ぎの厚化粧のおばさんに優しくこういう。
「すいません、急患です」
彼女はまったく驚いた様子もなく読んでいた雑誌を机の上に放り投げると、その紙に名前を書いて、と言った。
「僕じゃないんですよ、後ろに立っている彼女なんです」
「あんたの後ろって・・・・」
僕が振り返ると、そこに彼女の姿はありませんでした。細い樫の木がだらしなく葉を垂らして、生えていました。
「そうです、この樫の木が急病患者です」