第十八章

茫然自失。

羊は「Waking life」に文字通り、衝撃を受けた。そして傭兵が言うエントロピーの世界観と彼が言った羊の人生の最も影響を与えているだろう“誰か”に思いをめぐらせた。

さて、と羊は思う
< さて、ボクは、特定個人でないにせよ、社会や組織やコミュニティーや宗教や健康志向やら、エコロジーやら拝金主義やら、その他100万以上のイデオロギーの体系から逃れて暮らすなんてことができるだろうか?恐らく無理だ。
でも、CLUB Caveで松原真のライブを楽しく見ていたのに、目が覚めたら地元の商業高校行きのバスに乗っていて、しかも間が悪いことに図書館で別れたっきりの女の子に出逢って、本当の意味でも告別をされるだなんて・・・。こんなことが必然的だっていうのは、幾らなんだってひどいじゃないか。
でも・・・でも・・・でも・・・ >

羊は自問自答しながら、机の上にある「25 Strange stories」を手に取る。

< なんで二番目の話から跳んでいきなり六番目の話になるんだ? 三、四、五はどこにいったんだ?10番目の美容師の話なんて、ボクは読んでいない。だけど記憶にある。盗聴器は? ハルキンはなぜボクをCLUB Caveに案内したんだ?208ってなんだろう?209もいるのかな? >

色々悩んだが回答がでず、とりあえず羊は次の話を読んでみることにした。

< もし、傭兵が言うようにいずれは混沌に巻き込まれるのだったら、何もそんなに焦ることはないだろう。どっちにしたって同じことだ >

羊はページを開いた。