2008-01-01から1年間の記事一覧
工員が住んでいる寮にはバスタブが二つある。 仕事が早く引けた日の工員たちのたいていの楽しみは、飲酒と入浴である。といっても飲酒派は帰宅が遅くなるので、この工員(早く帰ってきた)さっそく湯船に湯を張りはじめると、右足でゆっくり浴槽をまたいだ。…
さいきん食事時に「いただきます」と口では言っているけれども、心から思っていない。感謝という気持ちがあまり起きない。 「ちょうし乗ってんじゃないの?」 「そうかもしれない」 改めたときにはもう遅かった。携帯が壊れてしまったのである。 これは控え…
松原が狭い玄関をくぐると、管理人の長谷川は震えだした。私はそれを目の前で見ていたから知っている。 「もうだめよ~。地球が・・・地球が壊れる・・・」 「何やっとんねん」松原は長谷川の胸倉をつかむと、次の瞬間ゆっくりと抱きしめた。「何やっとんね…
もちろん週末は休みである、という工員もいる。 だからこそそこに発生した仕事を片付ける工員も発生する。 つまり、工員に休みはない。
人間が、そのありのままの姿を批評する姿ほど、滑稽なものはない。違うだろうか、否? よく人は言う、その上でさあ~、なんて。副詞的に。 「え、どの上?」とかね、聞きたいのを、拙者はガマンしてですなあ、いるのですよ。そう。偉そうにさ。 はあ・・・。…
工員は、単数名詞ではない。 工員は自分を呼ぶときでも、我々、という。 工員は、単数名詞ではない。 工員は自分を呼ぶときでも、我々、という。
我々のパーツのもっと細かい部分を担当しているのが女子部である。 彼女らの勤める別棟では、いつもラジオが流れているという。
体が丈夫で、単純労働に慣らされた工員たちにも、本当の苦しみの時が。というのは午後2時だ。
学校で流れていたのと同じチャイムが流れる。 午はんを食べに工員は外へ出ます。 薄暗い建物から出て、マスクを外し、大きく伸びをして、空気に漂う食事の香りを吸い込み、 ある工員は煙草の火をつけ、またある工員は缶コーヒーのプルトップを空けて、またあ…
流れてきたのは鉄の何か。 これだけでは何か判別できない。 青く塗られた鉄のフレーム。大きな魚の顎の骨が、今、目の前まで来た。
「当工場では、あらゆるものを作っている、と言ってしまってよいかもしれません」 「そして同時に」 「そして同時に、この世の何も作っていない、と言うこともできます」 「当工場では」 「当工場では・・・・」
「こんにちは。 今日は皆さんに『工場』について話をしたいと思います。 突然ですが皆さんは工場と聞いて何を思い浮かべますか?」 ざわざわ、ざわざわ。 パン?ロボット。いや、車、船! 「そうです。 この世には様々な工場があります。 食品、機械、乗り物…
前回の続き http://blogs.yahoo.co.jp/poko78/54374582.html 「いったいなぜ?」と上司二人は訝ったが、私としてみれば当然の理でした。 なぜなら同じ部署の人間全員とかなり親しかったからです。 IT業界は人の移り変わりの激しい職場です。 プロパーさんに…
前回の問題が解決したのでお知らせ。 下記参照 http://blogs.yahoo.co.jp/poko78/54138718.html 簡単にいえば私はIT派遣。 こじんまりとした派遣会社より大手企業のエンジニアとして派遣されている。 2007年8月から働き始め、2008年2月に欝で休職を取ること…
先日かかりつけ医から申し渡された休職期間がさらに一ヶ月延長になった。 当初、派遣元と派遣先、それから私の共通認識としては3月27日 から現場復帰の予定だったが、体調の改善が見られないため、 一ヶ月延長と相成った。 しかしながら問題は派遣先で、彼ら…
オペラのコンサートが終わったときのような拍手が鳴り響いている会場で、「オレは不誠実なやつかもしれない」、と思いながらいい歌を歌った。もちろん、対価は大きい。スタンディングオベーション、途切れないアンコールの声、オンナの嬌声。そして多額の現…
曇ったメガネで世の中を見ているとぼんやりしているだけじゃなしに 大切なものがよく見えない。 ・・・・・なんちゃって。 こんな"はす"にかまえた比喩を使わないでいうと、 悪い人ばかりじゃない。あたりまえだけれども。 まずは身近な人に相談してみる。…
お医者さんに相談しましょう。 実際に、つまり法的には最長で1年半、給与の6割を貰いながら会社を休むことが可能です。 もしお医者さんから「欝」と診断されて診断書を貰うことになったら それを会社に郵送すれば、法的にまともな会社ならば、診断書に書かれ…
一ヶ月の休養期間を会社から貰うことができました。 このことを起点にすこしブログを書いて見ようかと思いました。 メンタルヘルスを病んでいる方が読んでいると思いますので、私の持っている情報を 主に語りたいと思います。 何を語ることがあるのか? 会社…
たたき台は作っておいたし、この場におよんでえいやっでやってしまうとも思えない案件だった。 「すり合わせできてんのか?」心配性の笹希だけに裏は取っておく必要があった。 「通ってます。ご心配なく」ヤスシはNRの札をスケジュール表に張ると、今日は客…
「営業とのさ、コンセンサス取っといてよ」笹木課長は言った。「鈴木先生、どうよ?」 鈴木ヤスシは縷々とそれに答えた。 「逆にいうとそれって営業マターですよね。たしか今月イッピまでに数字もんどくってメール投げてましたよね、マストだって」ヤスシは…
沈んでいく。 そんな感慨に真は浸っていた。 目の前では茶色と白の残像が揺れている。 背骨を通じて鈍い信号が、揺れにあわせて、伝わってくる。 腋の下にたまった汗が一筋二の腕を伝ってシーツに滲んでは消えた。 漆喰の壁一面に赤いペンキを垂らしてある部…
日記を閉じると私は深呼吸をひとつした。 部屋は静まり返っていて壁ひとつ隔たったキッチンで唸っている冷蔵庫のラジエーターの音以外は何の音も聞こえない。 MDコンポの再生スイッチを押すとしばらくしてからチェロがかすかに響いてきた。 ♪ 'Cause it's a …
なべに湯を沸かして、そこへ蕎麦を放り投げる。菜ばしで軽く2,4度かき混ぜて蓋をした。 冬は蕎麦が美味しい。冷たい水のおかげだ。 薬味として白髪ねぎの刻み、すりゴマ、卸がねで擂った山葵。 蕎麦つゆには鰯と鰹の白だしをミックスし最後にたまり醤油を煮…