入浴

工員が住んでいる寮にはバスタブが二つある。
仕事が早く引けた日の工員たちのたいていの楽しみは、飲酒と入浴である。といっても飲酒派は帰宅が遅くなるので、この工員(早く帰ってきた)さっそく湯船に湯を張りはじめると、右足でゆっくり浴槽をまたいだ。
彼はまだ空に程近い浴槽に体を収めると、遅々と満たされていく湯量に、得体の知れない喜びを感じている。それは彼に確実な未来、安心感を与えてくれるのだ。