毎日一緒

 前回の続き
http://blogs.yahoo.co.jp/poko78/54374582.html

 「いったいなぜ?」と上司二人は訝ったが、私としてみれば当然の理でした。
なぜなら同じ部署の人間全員とかなり親しかったからです。

 IT業界は人の移り変わりの激しい職場です。
プロパーさんに聞けば1,2年で人がガンガン変わっていくそうな。

 「IT、って言っても俺たちは下手すりゃ毎年違うことをやってるからね」
直属ではないが、技術畑のプロパーの先輩は言いました。
「どういう意味ですか?」と私。
「つまりね」

 ちょうど飯時、我々チーム4人組みは並んで食堂に陣取っていた。
「業界の流れが速すぎて技術が追いつかないんだよ」ともう一人の先輩が言った。
「?」もちろん、私。
「もうちょっとわかりやすく言うと、
今売ってる技術はあと1年、遅くとも2年たてば時代遅れの代物になる」更に一人の先輩が付け足す。

ってな感じで、私はわからないながらも話になんとか食いつき、そしてそこにひとつの解決方法を得た。
彼らの言を要約するとこういうことになる。

IT技術は日々進歩している
・その進歩に人間は追いつけない
・だからサービス、製品が出た時点でそれはすでに流行遅れである
・結果として、新しいことをどんどんと覚えなければならない

という業界の慣例で、新しいことを覚えるのが苦になる人は働き続けられない。
ゆえに、人の移り変わりが激しいのである。

そらそうだろう。
昨日まで一生懸命覚えた知識が、一夜にして無用の長物(ってことはないけど)、役に立たなくなる。
人間はそれほど丈夫にできていない。

私だって、それほど柔軟な人間でもないし、理工系の基礎知識すら持ち合わせていない。
じゃあ、どうすればいいのか?といえば、
一にも二にも、人間的にいいやつにならんければならない。

それからというもの、食事はいつもチームで食べて、飲みに行くのにも付き合い、
直属の上司と毎日一緒に帰り、出身、誕生日は言うに及ばず、人間的傾向(休みの日に何をやっているのか、好きな色は、好みの異性のタイプ)まで事細かに聞き、メモを取った。

これが功を奏した。両面においてである。

うつが発病したのも仕事の合間にこうした気を使いすぎたことが一端にあることは否めないが、
結果として長期休暇をとるはめに陥ったとしても、

「お前以外はいらない」とチームの人間に言ってもらえるまでに人間関係を築き上げた。

これは別に自慢でもなく、当たり前の話で、一昔前の日本人はみんなやっていたことだが、
昨今こういう人付き合いができる若い人間が減っているのも事実である。
自分が健康なうちはいい。好きなだけ嫌なやつになるがいい。
だが、ひとたび体を害し、心を病んだとき、いったいどれだけの人が「あなたでなくてはいらない」と言ってくれるか。
考えてみてください。