第二十四章

もうどれくらい歩いただろう。
24時間は経過しただろうか。

羊は、暗闇で音も無い平坦な道を、歩き続けている。

思い思いの方向へ歩いている。右へ左へ、東へ西へ。

羊の孤独は羊を包み込み、やがて羊自身を飲み込もうとして
やっぱり立ち止まり、闇の中に戻っていく。

その繰り返しだ。

ふと、足元が一部だけ凹んでいることに気が付く。羊は裸で裸足だ。

しゃがんで、その凹みを探る。手で丹念に探っている。そこは暗闇だ。窪みの形が脳裏にきちんと浮かぶまで、ずいぶんと時間が掛かっている。

さて、それは、


羊の手の形とぴったり一致した。

右手だ。
失われた、右手だ。右手の意味だ。右手的な右手のあり方を、右利きの羊が気が付けば
すべては解決する。

羊はその意味についてじっくりと考えてみる。