2005-10-26から1日間の記事一覧

第二十六章

ノラ犬は去り、羊は失禁し、暗闇はよく目を凝らしてみると灰色になっていた。 羊は地面に仰向けに寝転がり、空(?)を眺めていた。 ふと、空が微かだが動いていることを羊は発見する。空が動いている。 空は、時に縦に、時に横に、時に斜めに、動いていた。…

第二十五章

右手を地面の型にしっかり合わせてみる。 それは寸分違わず、羊の右手を一致している。 僕の右手と一致している? どうして? でも間違いない、これは僕の右手だ。 僕の右手。 そんな歌があった。 「僕の右手を知りませんか?」 ブルーハーツだ。 「行方不明…

the 19th story~ 「些か」「砂」~

コードネーム 「些か」 コードネーム 「砂」 「些かぁ」と砂は言った。 「なんだ砂?」些かは応える。 「この名前なんだけど、些かってやつな。俺には読めるけど、中卒じゃ読めないよ、高卒だって怪しいぜ」砂は靴を磨きながら言う。 「別にいいんだよ」と些…

the 18th story ~ 複雑に緊迫した ~

ボクには恋人がいた。 かつて、いた。 今は他人だ。 でもかつてはいたのだ。確かに、いたのだ。 ではどうしてかつてはいたのに、今はいないのか。 ボク達は別れたからだ。 不思議なものだ。 別れると、もう付き合っていないのだ。もうその時点から、恋人でな…

第二十四章

もうどれくらい歩いただろう。 24時間は経過しただろうか。 羊は、暗闇で音も無い平坦な道を、歩き続けている。 思い思いの方向へ歩いている。右へ左へ、東へ西へ。 羊の孤独は羊を包み込み、やがて羊自身を飲み込もうとして やっぱり立ち止まり、闇の中に戻…

the 17th story ~とめどなく 夢を~

コーヒーを入れる。 タバコに火をつける。 いすに座る。 パソコンを立ち上げる。 眼鏡を掛ける。 一口コーヒーを啜り、一口タバコを吸う。煙を吐く。 溜息を付く。 思い出を思う。 本を開く。活字を拾う。タバコを吸う。コーヒーを飲む。 ノック。ノック。 …

第二十三章

漆黒の闇は少しずつだが、羊を蝕んでいった。 白くふわふわとした羊毛は、墨でも落としたようにじわりと暗闇に染まっていった。 「怖い」羊は声に出してみる。「誰か助けてくれ!」 しかし羊の声は響かない。恐ろしく響かない。 しばらくして羊は立ち上がっ…