the 17th story ~とめどなく 夢を~

コーヒーを入れる。
タバコに火をつける。
いすに座る。
パソコンを立ち上げる。
眼鏡を掛ける。
一口コーヒーを啜り、一口タバコを吸う。煙を吐く。

溜息を付く。

思い出を思う。

本を開く。活字を拾う。タバコを吸う。コーヒーを飲む。

ノック。ノック。

誰か来た。
扉を開ける。しかしそこには誰もいなかった。仕方なく、扉を閉める。またノック。



メールチェック、ミクシィチェック。誰からも連絡はない。

電話が鳴る。非通知。留守電は一杯。

コーヒーを飲む。タバコを消す。灰皿には吸殻が一杯だ。

砂糖を探す。コーヒーに入れる。箸で掻き回す。

コーヒーの匂いをかぐ。

お香を焚くことにする。金木犀

頭を掻く。爪の間に垢がこびりつく。
爪の間は真っ黒だ。

風呂に入ろうかと逡巡するが、HPに気になる書き込みがあり、キーボードを叩く。

電話が鳴る。もちろん、取らない。
代わりにテレビを点ける。
笑い声、笑い声、嬌声。

電話の音は止む。

カーテンを開ける。窓も開ける。寒い空気。

雨、風、匂い。

時は巡る。夢も巡る。明日は来る。今日は去る。去り掛けている。去りつつある。

風が冷たい。窓を閉める。そして暖房を点ける。

相談したい、と思う。未来が見えないことを。明日は来るのかということを。

誰もいない。誰にも話せない。それを断定的に喜んでみる。

鏡の前に立つ。

喜び、悲しみ、笑い、泣き顔。どれもリアルじゃない。

泣き顔は、色々なことを喚起する。さりとて、何も生まれない。
思い出からは何も生まれないようだ。

時間は巡る。

またタバコに火をつける。煙を吐く。灰皿に灰が溜まる。吸殻も。

テレビの中では恋人たちがすれ違う。
いや、もうそれは恋人ですらない。他人。別個体。

記憶が擦り切れる音を立てている。ふとよみがえる光景。その光景を追ってみる。散り散りになりそうなところを、更に深追いしてみる。
淵が見える。
そこには、何かが蠢いている。
何か?

何か?

何か?

蠢きとざわめき。恐怖。映画。

時として、だけれども。
ので、ながら、のでながら。AS。

AS   US

我々。

ので、ながら。

時として時として。

ふと、音楽に酔いしれる。ビル・エバンスに、酔いしれる。

冷蔵庫、手、炭酸水。サントリー

グラスに琥珀色のアーリータイムスを注ぎ込む。そして炭酸水。

光にグラスを透かしてみる。

泡立ちやがって。

泡。

トイレに飛び散る、小便だ。
ワンアウト、ダブルプレー、チェンジ、何も残らない、何も。