7話

少し俺の話も。

時は、2004年4月。
六本木ヒルズがオープンしてちょうど1年を迎えた月。
俺はオープンから1年勤めたその不夜城のテナントのひとつである中華料理屋を辞めて、京橋にある商社で働くことになった。

商社といっても社員は社長と俺を含めて4人、内ひとりが経理だから、実態は3人の家族経営レベルのやつである。

輸入家具の訪問販売から身を立てた社長は、景気の波をうまく掴んで、銀座にエステをオープンする直前だった。

まともな職歴も学歴もない俺に選択権などあるはずもなく、正社員というだけで飛びついて入社を決めた。社員契約は果たされることはなかったが、それはまた別の話で、これを機会に上京時から住んでいた東新宿の家を解約し、友人の洋平の勧めるままに「緑の家」に引っ越すことになった。