2005-11-05から1日間の記事一覧

final story ~ 柵 ~

その柵がいつからあったのか、町内の誰も答えられなかった。 雨風に曝されて、ボロボロの木片と化した柵。憐れみを誘う佇まいだ。 ボクは憧れていた。10歳の頃だ。 存在に気に止めている者はなく、優越感すら感じた。 14歳の秋にジッポライターのオイルを撒…

第三十一章 終わり

こんな感じで終わることに誰も不満はないのか? ない。 羊の物語はこれで終わる。 作者―――ボク=羊―――は丸谷才一の文章読本を片手にこの小説を書いてみた(嘘)。 もちろん、うまくいかないことが殆どだったし、うまくいったためしなんてない。 “25の奇妙な…

the 24th story ~ アヒル同様に ~

アヒルという生物が在る。漢字で書くと、家鴨。やがもである。 辞書を引くとこうある。 マガモを飼いならしてつくられた家禽(かきん)。紀元前に中国とヨーロッパで別々に家禽化されたという。肉用・卵用・卵肉兼用など、20種ほどの品種がある。 マガモ? カ…

the 23rd story ~ 携帯電話絵本 ~

新たなビジネスコンテンツ。 一日一絵本。グリム童話とか毎朝絵本でチェック。 教訓的コンテンツ。 流行るかな?

第三十章

こっそりと“the 25 strange stories”を病室に持ってきていた羊は「水口」の章を読み終えると、不思議な感慨に襲われた。ぬるりとした納豆のネバネバで身体を包まれたように、それは不快だったけれど、羊は甘んじてそこに浸った。そして本を閉じて眠った。 朝…

the 22nd story ~ 水口 ~

ボクという人間について語る場合、水口■●子について語らないわけにはいかない。 それがボクのリビドーだからだ。 情けないことに、ボクの性衝動は相変わらず彼女を起点にして動き続けている。(彼女は)振り子の支点のようなもので、彼女なしにはボクの感覚は…

第二十九章

「結局、現代における宗教ってのは、エロティシズムの曲解かファッションでしかなくなっているわけですよ、ダイさん」羊は見舞いに来たダイチに向かってふてぶてしく言い腐る。 「そうかもしれないねぇ、ほら、りんご剥けたよ、羊くん。美味しいよ、はい」ダ…