final story ~ 柵 ~

その柵がいつからあったのか、町内の誰も答えられなかった。

雨風に曝されて、ボロボロの木片と化した柵。憐れみを誘う佇まいだ。

ボクは憧れていた。10歳の頃だ。

存在に気に止めている者はなく、優越感すら感じた。

14歳の秋にジッポライターのオイルを撒いて、火を放った。

なぜか、良く覚えていない。きっと「金閣寺」か何か読んだのだろう。とにかく14歳の時、赤々となって空へ吸い込まれていった。

過日、通う学校に調査が入った。放火は初犯でも5年以上無期の懲役で、重犯罪に属するものだと知ったのはその時だ。

でっちあげのアリバイで難なくその場を切り抜けた。

それが決して、罪を逃れられたことを意味するのではなかったことを、後日ボクは知る。それはまた別の話だ。

古い日本の民謡にこんなものがある。

「タバコに火をつけて、山道で遊んでたじいさんが、うっかり落とした燃えカスで、小山を一つ燃やしました。狸は慌てて尻尾を丸め、狐は煙に巻かれて死んじゃった」

意味がわからない。

でもいい。これはボクの物語だから。