「十九歳や二十歳で、よほどの天才でもない限り、小説って書けないんだよ。例えば十年以上、肉体労働してるとか、なんだかんだで最低底の人をたくさん見てないと、ちゃんとした小説は書けないよ」
第百三十回の芥川賞(金原ひとみ・綿矢りさ)の受賞に対しての中島らもの言である。
「蛇にピアス」でも「蹴りたい背中」でも、出色っちゃあ出色の出来だと、私は思う。普段なら欠席する龍さんが、福田和也の批判にある通り、わざわざ表舞台に出てきて「いや、あのね、ホントにすごいと思うんですよ」なんてカンブリア張りの言を弄するところからも、そこは知れるんだな。
でも、らもさんは小説のことではなくって「小説」のことを言ってるんだと思うんだ。つまりカギカッコ付きのいわゆる「小説」、小説ね。
でも、らもさんが好きでね。なんとなく批判もありつつも、「うんうん、わかるわかる」って言っちゃう。同意しちゃう。でもさ、そもそも、これって嫉妬もあり気の「認め」的発言だと思うんだな、これってさ。
なんて怒涛のように(どんなですか)、過去を振り返ってしまった、私。中島らもの「異人伝」なんてとらなきゃよかったよ、とほほ。