2006-07-08から1日間の記事一覧

★96

この話はカウチポテツの何たるかを語るともに、どうしてあんな素晴らしい女、エイミーと俺が別れるはめになったのかを検証したい。 最初に断っておくと、俺は決して悲観主義者ではない。 むしろたいていのカウチポテツは(多少の)悲観的傾向がある、根っか…

★1209

ヒロユキが急性白血病に罹っていると知ったときエミリーは日本語で掛け算九九ができるようになっていた。 「ににんがし、にさんがろく、によ・・しが・・・」 「ふふふ、はち」 こんな感じで死んだそうだったが、前後の詳細は長すぎるので省略する。要するに…

★610

ジュネーブで修士課程をおえ、ケベックに帰国したエミリーは大手の信託銀行に勤めはじめた。 三期連続でインターンを引きうけた甲斐もあって、まわりは知った人間ばかりで、仕事に不満はなかった。給与や待遇でもまったく文句をいえる状況ではなかったが、エ…

★ 1130

彼女はバーに居心地悪そうに腰かけ、氷がほとんど溶けてしまったマウンテン・デューのグラスの底をストローでかきまわしていた。 「昨日はどこにいたのよ?」 俺が隣に座ると、彼女は発作みたいに訊いてきた。 「ずいぶん、古い話だね。思い出せないな」 「…