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「ええ、結論からいいますと」CIA長官はゆっくりとカンペに目を通すと、もう一度カメラの方へ向き直った。レンズの向こう側では世界がその言葉を待っていた。

「あと7年後に地球は滅びます」

その後の世界がどうなったかは想像に難くない。意外といままでどおりだったのである。人々は朝からきちんと起きてネクタイをしめたりヘルメットをかぶって昨日まで働いていた職場で粛々と昨日までやっていた仕事を続けていた。まるでそんなことは起こらないといわんばかりの自然さで。

一応説明らしい説明はされ、科学的根拠に十分基づいた証明がされたにもかかわらず人々はいままでどおりの生活を続けた。昨日まで民族紛争をやっていた地域は次の日にもちゃんとミサイルを打ち込み、弾丸を敵陣に向かって発射していた。肉屋は肉を切り、魚屋は魚を売り、八百屋は野菜を売った。新聞は毎日発行されたし、漫画や雑誌は発行にきちんと発行された。ウェイターは食事を運び、客は食事の後にきちんと金を払った。

そうして3年が経った。