年末の工員

 別にどうということでもないが工場にいっても誰もいないのでしかたがないから部屋で工員は寝転がりながらテレビを見ていると知った顔が目に入って、あれこれはひょっとしたら、などど久しく使っていない脳みそを使ったものだから突発的に強烈な頭痛が襲ってきて台所の脇にしまってある箱の中からバファリンを取ろうと立ちあがろうとしてみると足元にあったこたつのコードに思い切り親指がかかってこたつの上にあった湯のみ、灰皿、急須などがボロボロと絨毯に転がり落ちてしまい、うあわちゃああ、と声にもならない声で呟くともうしばし後、といわないまでもけっこう近い未来で5分後、いや1分後かな、俺はこの床に散らばったどうしようもない生活の上澄み、家庭用食器などを床から拾い上げて、布巾を持ってこれをふいたりなんだりと疲れること夥しい作業、これを作業と呼ばずして何と呼ぼう!をやらなきゃならないのは、必ずしも俺が几帳面だから、生真面目な田舎者だからというわけではないのであり、どちらかというと問題の根底にあるのはこのラグ、炬燵を置いてあるこのラグをどうしたもんかなあ、と買おうとしていたのは先々月のことでそれほど気に入ったというわけでもない毛あしの長い存外座り心地のよいラグで、なぜにこれを買ったのかといえば値段が恐ろしく安かった。500円だった。