第三十九話

 四角く区切られたビル群の一角。 空まで建物に区切られていて四角いわけで、その空間にくるくると旋廻する大きな翼の鳥は見ようによってはキャンバスの上で規則的に円運動を繰り返してる黒い筆先に見えなくもない。俺は地面に寝転がってそんな光景を見ている。

 長い間、俺はそんな風に空を眺めていた。

 「大ジョブですか! 大ジョブですか?」駆け寄ってきた男が俺の両肩をつかみながら言う。
 「けがはありませんか?」男はハンチングに小ぶりな眼鏡口ひげといった格好で、見ようによっては現代風のトニー谷に見えなくもなかった。俺はなんとか声を出してみようとするが擦れてしまってきちんとした言語にならない。茂木鳥が求愛しているときに似たような声をだすことがあるが、、、とそんなことを思っていると急に、視界の四隅が虹色に分解してきて、やがて世界の中心を残してすべてをノイズで埋め尽くしてしまうと、散り散りになって暗黒が覆いかぶさった。