工員は試しに土日月火と休んでみた

単純労働とはいえ休息は必要だ。 いったんラインから離れてみたものの、目の前の景色と手の感覚はそう簡単に戻らない。 3時間も同じラインに立ちっぱなしだったのだ。 
タバコルームの小さくて軋むドアを開けると紫煙の霞、(誇張ではない)の中に知った顔を何人か見つける。
「よ」
「あ、ども」
工員仲間は最近、家を買った。「給料安いからさ、母ちゃんに前の仕事に戻れって言われるのよ」
「前って何の仕事してたんですか?」
「不動産」

工員は次の週末、仲間と不動産屋にいた。ステテコに丸首の白いTシャツに、腹撒き。競馬の山師みたいな出で立ちで仲間が現れたとき、一瞬帰ろうかと思ったが、仕方がない。 それが今の私なんだ。

何件もの家を見て回るうちに、工員の中には<新しい自分>が生まれた錯覚が跳梁し始めて、迎えた月曜日と火曜日をその妄想との戦いのうちに消費してしまった。 工員は休んだ。