暗がりのバーで俺、言われる。女に。
「私のこと嫌いになったの?」
な、わけねーじゃん、俺はカウチだぜ?俺に選択肢なんてねぇよ!
と心の中で念じつつ
「嫌いの度合いにもよるけども、ほんのちょっとでもってんなら、答えは多分・・・」
残りの言葉はグラスに残ったウィスキーと一緒に飲み込んで、バーカウンターを人差し指で二度、軽くたたく。コンコン、そして俺は席を立った。
「4970円になります」
ふ、ここでもファミコン言葉か。
と心の中であきれつつ
「この女が体で支払うってさ」
扉はパタンと閉まった。くぐもった声が一度、二度聞こえると、辺りは静まり返った。
俺はなんだかやるせなくなって、コルトレーンの『スピリチュアル』のパーカッションだけをロリポップしながら帰った。
そしたら、隣室の小林さんが、ジョン・リー・フッカーの「ボン・ボン・ボン」で応酬してきて、びっくりした。
カウチポテツは、安定とは程遠い、沈み掛けのボート。運がよければ、どこかにたどり着くさ。運が悪ければ・・・。