「お客さん、いったい何だって、東京でカウチポテツなんてやってんだい?」
近所の居酒屋のオヤジが訊いて来た。
俺は言ってやったよ、東京の空気は体に良いって聞いてね、つまり健康の為さ。
「健康の為?空気って・・・、お客さん、そのどっちもカウチポテツは無縁じゃありませんか。」
蓋し、オヤジさんは正しい。
カウチポテツは往々にして不健康で、その生命維持に清気の質はまったく関係ない。
「さあ、店じまいだ。お客さんカウチだから、御代はいいや」オヤジはレジ閉めを始め、俺は帰り支度を始めた。
じゃ、ごっそーさん。
扉はガタガタと音を立てて閉まった。
俺はなんだかやるせなくなって、帰途、ビーチボーイズの『that's not to me』をやっぱりサビなしで口笛で吹きまくり、そしてやっぱり隣室の小林さんに、怒鳴られた。
カウチポテツは、保護されている。たまに怒られるけども。