☆33

「お客さん、いったい何だって、東京でカウチポテツなんてやってんだい?」
近所の居酒屋のオヤジが訊いて来た。
俺は言ってやったよ、東京の空気は体に良いって聞いてね、つまり健康の為さ。
「健康の為?空気って・・・、お客さん、そのどっちもカウチポテツは無縁じゃありませんか。」

蓋し、オヤジさんは正しい。

カウチポテツは往々にして不健康で、その生命維持に清気の質はまったく関係ない。

「さあ、店じまいだ。お客さんカウチだから、御代はいいや」オヤジはレジ閉めを始め、俺は帰り支度を始めた。

じゃ、ごっそーさん。

扉はガタガタと音を立てて閉まった。

俺はなんだかやるせなくなって、帰途、ビーチボーイズの『that's not to me』をやっぱりサビなしで口笛で吹きまくり、そしてやっぱり隣室の小林さんに、怒鳴られた。

カウチポテツは、保護されている。たまに怒られるけども。