the 13th story ~ 歌うネコ ~

ある晩のことだ。

少年は悩んでいた。

遠距離恋愛をしていた彼女から
実に六ヶ月振りに、手紙が来たのだ。

少年は悩んだ。なぜなら彼にはもうすでに新しいガールフレンドがいるからだ。
しかし、手紙。開けずに捨てられるほど、少年は大人ではなかった。
12歳だった。少年は青年へ発展の途上だったが、あくまで普通の12歳の少年だった。
半ズボンを履いているもの。

ハイケイ 

ゲンキニシテイマスカ?ワタシハゲンキデス。
アタラシイマチニナレルノニハ、ヤッパリイツモタイヘン。
カタカナノテガミッテヨミニクイデショ?

いやはや、開けてはみたものの、もはや狂人の沙汰としか思えない
カタカナだけで書かれた手紙だった。

少年は、やはり結局悩んだ。なぜならば明日は、新しいガールフレンド
お琴ちゃん家が主催する「フラダンスパーティー」があって、
朝4時に起きて用意するといって聞かないお琴ちゃんに付き合って
会場に一番乗りに駆けつけて、ベストポジションに陣取りカメラを
回さなくてはならないのだった。

「フラダンスパーティーか」
少年の心には「ハメハメハ大王」が朝日の前に起きて、夕日の前に寝てしまう、
といういかにも百姓染みた習慣の元、学校をサボる図が浮かんでいた。
しかし(もちろん)、カタカナの手紙とはいえ、読まなくてはなるまい。

あーでもー、カメラの場所取り・・・。
どうしようかな・・・・・。

うーくー、ええいままよ。

と、結局、手紙を両手で開くと、声に出して読んでみた。

「(略)・・・・ヒトリモトモダチガデキナカッタワタシハ、ネコトトモダチニナッタワ。スゴイノヨ、コノネコウタヲウタウノ」
これは彼女の両親に知らせるべきことなのかもしれないと、少年は心の中で去年同じクラスだった時のクラス文集のありかを探していた。住所を調べて、両親に教えなくては、彼女が狂人だって、こと、、、おいおい、そんときゃどんな言葉を使って、どう伝えるんだよ!俺が親なら発狂するぅ。
「アナタノシャシンミセタラ、スゴクせくしーナヒトダッテ、ホメテイタワ。ソウソウ、コノネコメスナノヨ。メスネコ」
メスネコ。
そんな言葉に反応してんじゃねぇよ、マセガキ。

3:45 



ジリリリリリリリリリリリリリリリィ、

朝だ。