the 12 story ~ 聡明さ争い ~

人の死というのは悲しいものだ。
小学校の時一度同級であっただけの者であれ、それは等しく悲しい気持ちを抱かせる。

そして親しい者が逝った時、
Live forever」と声高に叫んでも、もちろん、何の解決にもならない。

カトウの訃報を聞いたマイコは、ナガイの前で泣き、
喚き、そして発狂した。

もう彼是、2週間はそうしていただろうか。
彼女はひとり川で獲れもしないロブスターを探して
血眼になっていた。

今日もいつものようにマイコは川を目指して歩いている。
彼女の手には古びたアルミ製のバケツと、ナガイが作ったタモが
握られていた。

すると、草陰から一人の老人がぱっと道を塞いだ。
「おじょうさん、ロブスターを探してもここにはおらんよ、あっちを探しなさい」と言うと老人は川とは反対側の丘の上を指した。
「あっこなら、ロブスターがいっぱいいるからよ、川はやめてくれ」老人の目は、口ほどに物を言っていた。三白眼が今にも飛び出しそうだ。
「わかったわ」マイコは大した興味もないといった風情で、今度は丘へと上り始めた。

一部始終を木の陰から見ていたナガイは老人の言を訝しく思い、
ずるずると足を引きずりながら川へと向かう老人の後をそっとつけた。
右足が不自由のようで、地面に引きずっている方の靴の甲がすっかり
磨り減っている。靴下に少し血を滲ませいているが、痛みより歩くと
いう行為自体に疲れているらしい。肩で大きく息をして、時折木を見つけると
両手を突いて休んでいた。

やっとの思いで川面まで来ると、老人は何かを口から吐き出した。
グレーの何かであることしたナガイにはわからなかった、しばらくすると
凄まじい異臭が風に乗って流れてきた。
「うおぇ!」思わず、吐きかけて、ナガイは声を上げてしまった。

ぐるっと振り向く老人。
「何もかも知っているんだよ」口端からグレーのドロドロを零しながら、老人はナガイの方へ寄って来た


私は、何も、かも、知って、いる、んだ。

なななな、何、

何も、かも、な、


な、

聡明さ争い・・・・

聡明

聞こえるんだ

見えるんだ

はははは