12話

「どんな人?」2007年春。
「天使みたいな人」

俺としんさんは緑の家の俺の部屋にいる。
しんさんはそこで俺に恋の話をしている。

俺もしんさんもどうしようもないクズだから、それはそれは仕事を変わった。
倉庫整理、インターネット回線の電話営業、出会い系サイトのサクラ、テレオペ、飲食などなど。
中卒だろうが、前科もんだろうが、清濁併せ呑む表の仕事でそれはそれは働いた。貯金もなければ遺産もない。ヒモになるにも女もいない。そう。働かざるをえなかった。

時に俺は無職、伊豆で働いた金も尽き、家賃の滞納は5ヶ月を数えていた。しんさんはコールセンターでスーパーのクレーム処理をしていた。そこでしんさんは天使にであったという。犬も歩けば棒にあたる。部屋で逼塞してた俺は少々彼が羨ましかったことを覚えている。

「天使?」俺は、それはそれは悪い予感がしたが、何も言わなかった。俺だってろくなもんではなかったし、だいたい他人のことなんてその時はどうでもよいと思っていた。
「告白しようと思ってるんだ」そういうしんさんの顔は少年のようだった。「ふられてもいいんだ」

彼女がしんさんの最後の犠牲者になった。