第二十一話

そうして妻がいなくなってから、400日が経った。 結局、妻は捕まらなかった。 しかし努力だけは惜しまなかった。 私は微かに残っている「努力」と「根性」を、文字通り、振り絞って彼女を探してはみたのだ。 
 まず私は北海道に飛んだ。 それから、タイに行って、今度は中国へと飛んだ。 行く先々で彼女の断片を手にして、町から村、村から山、山から海へと巡り、日本は4県を歩き回り、都合ユーラシアの半分くらいの国家を廻った。 
 いや、ただ私が旅をしたかったのかもしれない。 それはわからないが、私は妻を捜しながら旅を続けた。 そして400日目に、妻が東京に戻ったことを知った。 私は荷物をまとめて、伸びたい放題になった髭を剃ると、髪の毛を束ねて縛り、久しぶりにパスポートを取り出して、それをじっくりと眺めた。