第四話

「松原真の話」
● 音楽、そして

 うーん・・・・・・音楽ねえ、そうやなあ、なんやろ・・・・・・がんばれロックとか、そういったものを一生懸命やる場所なんやな、と。そういう気持ちになってきましたね。
 スポーツになぞらえるなら、今のリスナーは球技にしか興味がない。じゃあ球技やってればっていうことですよね。
 別に僕はいいんですよ。音楽やらないといけないという義務が、僕にあるわけではないですから。
 何年前かな、ライブでほんまのロックを2時間やったときに、観客が8人か9人だか、シングルだったという恨みは、まだ残ってますから。世間に対してはね(笑い)。絶対あの2時間はすごかったと思てるし、あんな観客数を出される筋合いはなかったから。
 だから音楽でいいパフォーマンス出すことはできますけど、まず観客が集まらないし、クレームもくるし、何一つ得がないんですよ。ほんとにハイリスク、ノーリターンですからね。ローリターンじゃないですよ、ノンリターン。
 一つだけ後悔しているのは、あの2時間はまるまるロックをやらないとだめだったのに、ちょっと保険を打ってほかの要素もいれたことです。
 いや、もちろんそれでもあんな観客数の筋合いじゃないですよ。ないんやけども、ちょっと自分のなかで迷いがあったというか、ちょっと逃げ道をつくってしまった。自分の、そういう部分が今となってはいやで、もっと正々堂々とロックをやるべきやったなあ、と。
 そういうことが映画へ向かわせたのかと言われれば、もしかしたらそういうことかもしれないですね。もし1万人とか集まっていたら、「あ、音楽でロックできるやんか」みたいになって、映画には行ってなかったかもしれないですから。だから、あれも一つの運命だったかもしれないですけどね。

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