空間の話

空間に興味がある。

時間と同軸の空間のことだ。

空間は在るのだろうか?
時間は在るのだろうか?

寝る前にふと考えてしまうことがある。

そんなもの在っても無くても同じじゃないか。
社会人としての私は毎晩そんな結論でお茶を濁し目をつぶってしまうのだが。

しかし空間の問題は時間の問題より重要な意味合いを帯びているらしい。
私の中で、の話だが。
それが証拠に、今朝は起き抜けから空間のことで頭を悩ませた。

今まで私がいた夢の世界は在るのだろうか?
確かに私は土を踏みしめる感触を味わい、女が歌うのを聴いたはず。
しかしその空間は今、目の前にない。
あるのはピンク色のキティー柄をした嫌らしい目覚まし時計だけだ。

もちろんそんな形而上的なことを考えている間にも時間は刻一刻と進み、
私は自ずから会社に遅参するはめとなる。(これを自ずからと呼ばないでなんと呼ぼう?)

上司には「猫の具合が悪く病院へ連れてっていった」と伝えた。
訝しそうに彼は私を見つめ、私はいごごちの悪さを感じないわけにはいかない。
ストレス。
分かっていても溜まってしまう。
胃薬を給湯室で飲み干すと、パソコンに向かう。

昼のチャイムが鳴ると、私は忘れかけていた空間の問題を思い出す。
空間は在るのだろうか。
眼前に手を伸ばし拳を握ると、指の隙間から空気が漏れた。そして頭上から鼻にかかる声を聞く。

「いっしょにご飯食べに行きません?」
私は席を立って、空間のことは忘れ飯を食おう、と言った。
同僚は首を傾げた。