ある日のこと 2

ボクがマスターとつまらぬいざこざに巻き込まれるハメになったのも、
洋子が原因だ。

洋子。 いたって平凡な、時計の文字盤みたいな名前とは裏腹に
洋子は、AV女優、控え目に表現しても新宿のキャバ嬢よりははるかにましな容姿。

話は1ヶ月前にさかのぼる。

だいたい俺が場末のピザハウスなんて骨董品みたいな代物に通うようになったのは
洋子の前に付き合っていた直子という女が原因している。

直子はこのクソピザハウスで働いて、俺は仕事が終わると、おっす、なんつって
ビールを飲む。2年近い月日がそんな風に流れた。

だが時は経ち、今じゃ雑誌のカバー、そこらじゅうで幅、効かすわけには
到底行かず、どちらかというと、不謹慎な理由で直子をふってしまった。
それが洋子との出会いである。

洋子は、はっきり言うと俗っぽい顔立ちで、いつもメイクには30分かかる化け物なんだけど
身体の具合がばっちしだった。

それに比べると直子は10人なみの顔立ちを表にさらすことを
それほど恐れていなかったらしい。彼女のメイクは10分で終わっていた。

直子は夜間大学で人文学を学び始め、ピザハウスのバイトを辞めることになり
そこに現れたのが、洋子だった。