苦い唇だった。唾液のせいだ。
彼女は、女のくせしてキャビンなんか吸ってんだ。ほんとあほみてえ。
でも俺はそんな彼女が好きで好きでたまらなくて、思わず歌を口ずさむ。
Today was gonna be the day? But they'll never throw it back to you....
「誰の歌?」彼女は窓を少し開けて煙草の煙を、ふぅと外に逃がす。
By now you should've somehow Realized what you're not to do...
彼女は窓際に座っている。足を組んで。
ピンクのカーディガンに首元にフリルの入った銀杏色のTシャツ。左膝が破けたリーバイス517のオレンジタブは此処から見えないけれど、70年代の藍色にとても良く映えていて、俺はすげえ好きなんだ。
「オアシスだよ。ワンダーウォール」
俺がCDを探していると彼女はいつの間にか足元に這っている。そして下から俺を見上げると、舌をぺろりと出して笑った。「いつかのように歌ってよ」
I don't believe that anybody Feels the way I do About you now ...「どこで生まれたの?」「静岡」
Because maybe「静岡のどこ?」「沼津」
You're gonna be the one who saves me ?
And after all You're my wonderwall...
色々なことがあったんだと改めて思った。