第六話 発病中

母「いや、何か話せって急に言われても・・・」
僕「いいから、何でもいいから話をしてくれ!頼む。じゃないとオレ、死んじゃうよ、オレ、死んじゃうよ」訳のわからない畳み掛けに母は戸惑う。

母「・・・・、そうじゃあ・・」
僕「何?なに?ナニ?」

母「あんたちゃんとご飯食べてる?・・・・アラ、やっぱり違かった?」

さすが母だった。全然状況が把握できていない。

まぁ、でもしばらく時間が経った今、こう思うね。

そりゃまあ、当たり前だと・・・。



例えばアナタが家で家族と一緒にご飯をつついていたとする。
しばらくみんなでテレビを見ていると、関西人司会者の男がわかり易いリアクションとして大げさにすっ転んだとしよう。家族はうすーい笑いに包まれる。
そんな時、携帯が鳴る。
「ちょっとご飯の間はスイッチ切っておきなさい」と母は不満げに言う。
ごめんごめんと謝りながら電話に出ると、ハアハアと息を乱しながら
「オレだけど、なんかしゃべって、とにかくなんかオレに語りかけて、はやくはやくはやく!」と男の声で言われたとします。

一体アナタ(オレ)に何が出来るってんだ?

発病中は車に飛び込んだって良いとすら思えるんです。
気弱な「ボク」が「この苦しみが終わるなら車に!!!」ってアタックしかけるんですが
「いやぁ、ちょっと待ってよ。なんで死ぬの?」って常識的な「自分」が出てくるんですね。

発病中ですか?

漠然とした危機感が「そこにいては危ない」と耳元で
繰り返すんですよ。1秒間に100回というありえない速度で。

まぁ、でもやっぱり常識的な「自分」は時のガールフレンドに電話ができない。