第五話 10分間

発病した後どうしたかって?

走りましたね。池袋の街を携帯で誰かを呼び出し続け意味不明の言葉を連続して切られ切られ切られ走り走り走り、やっと「パニ障」について詳しく知っている友人に繋がり、彼の指導で水を買い、人気のないビルの隙間へと身を潜めました。

「とにかく水をゆっくり飲んで床に座りな」彼は野太い声でそう教えてくれました。
自分はというと日ごろの不摂生が祟ったのか、10分間電話をしながら全力疾走するというある種苦行ともいえる荒業をしたせいか、咽も渇いていたし、足もガクガク言っていたので、彼の言いつけどおりそうしてみました。
「たたたた、タバコはすすすす吸って、いいいいののお?」間延び、吃音気味に訊くと、彼は優しい声で「もちろん、羊が一番良いようにしな、シラックス、シラックス」
「リラックスでしょ?」
「あはは、そうそうリラックス。・・・・オレ今なんて言った?」とかなんとか、言いながら巧みにボクをリラックスさせてくれます。シラックス・・・。

しばらくすると動悸は収まり、やっと息がまともに吸えるようになったのです。
足元にタバコが10本くらい捨てられていました。

一体発病中はどんな、なのか?それは次回の「発病中」にて。