第三章 雨漏り後

簡易的に取り付けた空き缶で急場をしのいだが、羊はまだベッドの上を横転していた。この雨漏りが何故だか重要な意味を持つのではないかと心配していたのだ。

「雨漏り」

羊は言葉にしてみる。




突然だが、町の話をしなくてはならない。
今、羊が自分の住んでいる土地のことを考えているからだ。「雨漏り」から羊がどうして町の略図について思い当たらなければならなかったのか?その確かな理由などない。

一つ、推測ならできる。

「雨漏り」は羊の部屋で起こった、類まれな(恐らく初めてだろう)、大事件だ。一人部屋は、今のところ、彼のすべてが収まっている場所と言える。
一人っ子の羊は、他の同級生に比べてかなり早い時期に一人部屋を頂戴した。羊、8歳の時のことである。以来、そこは彼のあらゆる秘密を両親に明かされること無く閉まっておける唯一の場所だった。
その唯一のテリトリーでの緊急事態に、羊はどうしても両親の力を借りることを潔しとしなかった。そして、今、隣町の進学校への受験に望む、希望に溢れた羊は、この小さな世界と決別を果たそうとしている。

町について話す。