第二章 雨漏り前

雨が降っていた。

霧雨だった。窓から出した手を引っ込めて、羊はその湿り気を確認する。机の上に本を置く。その側には壊れた盗聴器がある。羊はあらためてその機械に触れてみる。

と、その時だ。


ポタ



ポタ



羊の視線の端に、水雫がたまっていた。それは盗聴器があったコンセントのすぐ脇だった。天井を見上げると、黒いしみが木目の天井の一部に浮き出ていた。襖を開けて、階下まで行くと音楽が聞こえた。いつものあの曲だ。父と母が好んで聞く古い歌。確か「奏でる扉」というタイトルだった。

しばらく階段に腰掛けて、その歌を聴いた。子供の時から何度も聞いていた歌だった。