the 20 story ~ エッチ残像 ~

ボクは――轟――よく夢を見る。

それは不謹慎なくらい淫らで、不自然なくらい外国が多く、不可思議なくらい中世的な、夢だ。
毎晩、ボクはそんな夢を見る。淫らで外国的で中世的な。

或晩、ボクはインドで両性具有の女達と3Pの真っ最中だった。
A(便宜的にこう呼ぼう)はボクのペニスを咥えながら、中国語でしゃべる。
「あなたのは冬ね。冷たいわ」
Bはボクの乳首を嘗め回しながら英語でいう。
「ほら、金木犀の香りよ、私の唾液は」

ボクはそれを嗅いでみるが、それはちっとも金木犀の香りなんかじゃない。それは唾液的な匂いで、ボクは不快な気分で、顔をしかめる。

ボクにはペニスとヴァギナが両方付いている。彼女(?)達にしてもそうだ。

僕たちは世界の中間に属している。あらゆる意味で、中間的なのだ。同義的で両義的で。

「匂いと香り」Aはしたり顔で言う。
「ペニスとヴァギナ」Bはうふふと笑いながら、言う。
負けじとボクも「ボールペンと鉛筆」と言ってみた、が、どうやらそれは間違いだったみたいだ。

それをいうなら、とBはボクのアヌスに指を突っ込む。「鉛と鉛筆でしょ?」

「鉛と鉛筆?」ボクの声は間抜けなほど、クミコホテルの一室に響く。インド中の雑踏をボクのチャイが吸い取る。辺りは無音だ。そしてボクはAとBを投げ飛ばし、窓に足をかける。
「go johnny go!」そして空を飛ぶ。

目が覚めると、7時30分。

顔を洗って、髪を整える。襟付きのシャツに最近買ったヘルムートラングコーデュロイパンツに足を通す。

会社に行く道すがらBに探られたアヌスを思い出す。Aの言った冷たさを感じようとしてみるが、昼には、微かに残っていた夢の残像はまた一つ脳の深いところへ消えていく。

毎晩、ボクはそんな夢をみて、毎朝、彼女達のことを思い出しては、仕事に励み、そして記憶の不鮮明さを呪いながら、その巧妙な仕組みに感謝する。